研究課題/領域番号 |
21J00504
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
古賀 俊貴 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 核酸塩基 / 分取クロマトグラフィ / 元素分析/同位体比質量分析 / 炭素質コンドライト / 堆積物 |
研究実績の概要 |
初年度は、炭素質コンドライト中の核酸塩基の炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)の測定法の開発を行った。当初の計画では、ガスクロマトグラフ/同位体比質量分析計による核酸塩基のδ13C・δ15Nの測定を検討していたが、ガスクロマトグラフィーにおいて必要となる核酸塩基の誘導体化反応では同位体分別が生じる可能性が懸念された。そこで、核酸塩基のδ13C・δ15N測定は元素分析-同位体比質量分析(EA/IRMS)で行うことにし、その分析に必要となる目的化合物の単離を行うために分取液体クロマトグラフィー(HPLC)法の開発を行った。 まず、7種の核酸塩基標準試料(ウラシル、シトシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、グアニン、アデニン)の混合溶液から、分取HPLCによってそれぞれの核酸塩基を単離する手法を開発した。PFPカラムによる一段階目の分離で5つの画分に分割し、その後、C18カラムによる二段階目の分離で各核酸塩基の単離を行った。これらの二段階の分取HPLC後の回収率は90%を超えた。分取HPLCによる同位体分別や試料汚染の有無を評価するために、EA/IRMSによる分取前後の核酸塩基標準試料の同位体分析を行った結果、7種の核酸塩基標準試料のδ15Nを問題なく測定できることを確認した。 次に、隕石試料中からの核酸塩基の単離を想定し、堆積物中からの核酸塩基の抽出、単離、同位体分析を行った。それぞれ単離した核酸塩基のδ15NをEA/IRMSで測定したところ、ウラシル(δ15N = +9.5‰)、シトシン(δ15N = +7.0‰)、チミン(δ15N = +5.7‰)、キサンチン(δ15N = +4.4‰)、ヒポキサンチン(δ15N = +6.5‰)、グアニン(δ15N = +6.3‰)、アデニン(δ15N = +8.0‰)と有意に異なる同位体比が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで核酸塩基の同位体分析法の開発は他の研究グループによっても試みられていたが、適切な分析条件のもと、δ15Nを測定する手法を確立したのは本研究課題が初めてである。よって、本研究課題において最も重要となる核酸塩基の単離法を確立し、標準試料だけでなく堆積物中の核酸塩基のδ15Nの測定に成功した点から、当初の計画通りの進捗状況であると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、初年度に開発した核酸塩基のδ15N測定法について国際誌に報告を行う。本研究課題で開発された分析手法は様々な試料に適用可能であるため、生物試料中の核酸塩基のδ15N測定を行い、同一試料中のその他の含窒素化合物との比較を行うことで、生体中の窒素代謝の動態についてさらなる知見が得られることを期待している。その後、それらの生物試料の分析を経てより最適化した手法をもって、試料量が限られている隕石試料中からの核酸塩基の単離・同位体分析を実施する予定である。
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