研究概要 |
ストレンジネス量子数-2をもったバリオン多体系の分光実験を行うため、(K-,K+)反応用の磁気スペクトロメーター(S-2S)の全体設計を行った。この磁気スペクトロメーターを設置予定である茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCのハドロン実験施設における電気容量、冷却水容量、クレーン動作範囲などの実験条件について調査を行い、これをスペクトロメーターの設計に反映させた。また、実験室に既存の電磁石電源とのマッチング等を最適化して、磁気スペクトロメーターを構成する各電磁石の詳細設計を行った。鉄芯中での磁束密度やコイル線材中での電流密度等も考慮した結果、スペクトロメーター入り口部分の収束電磁石の1台について、予定していたよりも大型化する必要が出てきたため、全体の設計を最適化し直すこととした。S-2Sのための飛跡検出器系やトリガー検出器系についても概念設計に着手した。特に、スペクトロメーター出口部の検出器系は大型となるため、実験室のクレーンの動作範囲に収まるかどうか、また、ビーム遮蔽構造物との干渉がないかどうか等について検討を行い、問題がないことを確認した。一方で、J-PARCに既存のスペクトロメーターを利用して(K-,K+)反応の予備データを取得する可能性についても検討を行った。加速器からの陽子ビームパワーがある程度以上となれば必要なK-ビーム強度が得られ、グザイ・ハイパー核の存否に関する情報が得られることが分かった。
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