研究課題/領域番号 |
23222003
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
關 雄二 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (50163093)
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研究分担者 |
井口 欣也 埼玉大学, 教養学部, 教授 (90283027)
坂井 正人 山形大学, 人文学部, 教授 (50292397)
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
米田 穣 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (30280712)
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キーワード | 考古学 / 文化人類学 / 文明 / 複合社会 / 権力 |
研究概要 |
アンデス文明における権力の変容をさぐるため、文明初期にあたる形成期(前3000年~紀元前後)の祭祀遺跡パコパンパ(ペルー北高地)を3ヶ月にわたって調査し、遺構、出土遺物の分析を行い、基礎資料の収集に努めた。とくに経済面からのアプローチとして、同遺跡で出土量が際立つ銅製品について、銅の二次鉱物の産地を同定するとともに、日本においてその鉱物試料を用いた実験考古学的考察を行い、生産過程の復元を試みた。その結果、かなり高い金属製作技術を有していたことが判明した。この点は、金属製品の蛍光X線分析の結果とも一致する。すなわち、金製副葬品の場合、被葬者ごとに意図的に純度を変え、また部位に応じて金と銀の含有量を調整していたことがわかった。権力基盤に金属器生産があった可能性が推測され、この結果は、国内外の学会で発表された。人骨と獣骨の食性解析からは、同遺跡における後期(前800-500年)にトウモロコシが導入され、しかも人間以上にラクダ科動物が多く摂取していたことが判明した。当時の動物飼育についてさまざまな可能性を提示する斬新なデータと言える。2011年度積み残した一般調査については、繰り越した予算により、2012年8~9月に実施した。また考古学資料を主としたGISデータベースの作成に着手した。さらに、同じペルー北高地に位置するクントゥル・ワシ遺跡、ヘケテペケ谷中流域、ワンカバンバ川中流域でも調査を展開し、文明初期の多様な社会状況の把握に努めた。これらのデータの統合は将来的課題として残るが、成果は、一部の学術誌、出版物で公表するとともに、2011年8、9、10月、2012年2月にペルーで開催された国際シンポジウムで発表し、高い評価を得た。また2012年3月に東亜大学(下関市)でワークショップを行い、国内の学界にも公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年は、交付金支給の正確な見通しが得られないまま、所属機関の指導により現地調査費を予定より減額した形で持ち出したため、当初開始する予定であった一般調査を実施することができず、この分を繰り越し、2012年8月に実施した。一方で、発掘調査、各種分析は予定通り進み、また成果公開としてのシンポジウムについては、当初予定した以上に数多く参加、あるいは開催することができ、内容に対する評価も高かった。また科研プロジェクト専用のホームページを立ち上げた。こうしたことから総じて順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、2012年7月に、国際アメリカニスト会議(ウィーン)においてシンポジウムを組織し、2011年度までの研究成果を提示し、各国の研究者からの評価を取り込むことを通じて、今後の研究推進に活かす予定である。また発掘結果と各種の遺物分析結果がある程度出そろったところで、中間報告書(欧文)の作成を開始する。さらに、2013年1,2月には、中米メソアメリカを専門とするマヤ考古学者を招へいし、主に経済面を主体とする比較文明論のシンポジウムを開催する予定である。
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