研究課題/領域番号 |
23222003
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
關 雄二 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (50163093)
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研究分担者 |
井口 欣也 埼玉大学, 教養学部, 教授 (90283027)
坂井 正人 山形大学, 人文学部, 教授 (50292397)
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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キーワード | 考古学 / 文化人類学 / 文明 / 複合社会 / 権力 |
研究概要 |
アンデス文明初期における権力の変容をさぐるため、形成期(前3000年~紀元前後)の祭祀遺跡パコパンパ(ペルー北高地)を3ヶ月にわたって調査し、遺構、出土遺物の分析を行い基礎資料の収集に努めた。とくに、金製リングや銀製の針を副葬した墓を発見した点は秀逸であった。これまで金製品を伴う埋葬は、同遺跡後期(前800-500年)の初頭、しかも建築完成前の脈絡でしか確認されておらず、この発見により完成後にも社会的差異が存在していたことがわかった。人骨と獣骨の食性解析からは、同遺跡後期に導入されたトウモロコシが豊かな副葬品を持つ墓の被葬者よりも簡素な墓の被葬者の方でより多く消費されていた可能性が示された。新種の食糧・飲料が社会的地位の高い人間のイニシアティブで導入されたとは限らないことになる。また動物の移動性を探るべくシカとラクダ科動物の歯を用いたストロンチウム分析を行った結果、ラクダ科動物の生育環境がシカと比べて一定であることが判明した。飼育場所を特定するデータではないが、トウモロコシを摂取した個体が多いことから、遺跡周辺での飼育が想定される。 この他、考古学GISデータベースの作成を進めた。さらに、同じペルー北高地に位置するクントゥル・ワシ遺跡、ヘケテペケ谷中流域でも調査を展開し、文明初期の多様な社会状況の把握に努めた。これらのデータの統合を図るべく2013年3月に山形大学でワークショップを開催し、また成果の一部は、内外の学術誌、出版物で公表するとともに、2012年7月にウィーンで開催された国際アメリカニスト会議においてシンポジウムを組織し討議した。さらに2013年1月にはマヤ文明研究者を招聘し、経済面での比較を主とするシンポジウム(東京)、また同年2月には米国、ペルーの研究者を招聘し、アンデス文明国家形成時代のシンポジウムを開催し、比較というマクロレベルの研究を実施し高い評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度実施予定の一般調査を本年度に繰り越した件については、予定通り実施し、ほぼ全体の5割程度の踏査を終えた。またミクロレベルの発掘調査、各種分析も予定通り進み、研究会を通じて、同時代の他の遺跡の情報との比較を行い、メソレベルの研究を推進した。さらに内外のシンポジウム(ウィーン、東京、大阪)については、当初予定した以上に多くの企画を実現することができ、マクロレベルの比較研究を進めることもでき、また内容に対する評価も高かった。こうしたことから総じて順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ペルー北部での集中発掘と遺物分析、分離横断的な研究を進めながら、昨年組織した国際アメリカニスト会議(ウィーン)におけるシンポジウムの成果をイェール大学より出版すべく準備に入る。また昨年より開始したパコパンパ遺跡発掘報告書(欧文)の作成を順次進めていく。さらに、2013年4月にハワイで開催されるアメリカ考古学協会年次大会、9月にトルコで開催される予定の国際ラテンアメリカ、カリブ海研究所連盟会議において成果を発表し、11月にはスタンフォード大学のアンデス考古学者3名、2014年1月には国内の西アジア考古学者,2月には、米国やペルーの考古学者を招へいし、主に経済面を主体とする比較文明論のシンポジウムを開催する予定である。このように、一次資料の入手とその多角的な分析を進めるだけでなく、他の時代や地域の研究との比較を通じて、自らの研究の現在を相対化していく作業を進めていく予定である。
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