研究課題/領域番号 |
23242034
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桃木 至朗 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (40182183)
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研究分担者 |
秋田 茂 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10175789)
荒川 正晴 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10283699)
飯島 渉 青山学院大学, 文学部, 教授 (70221744)
飯塚 一幸 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50259892)
伊川 健二 大阪大学, 文学研究科, 招へい教員 (70567859)
市 大樹 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00343004)
内野 花 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 特任講師 (20586820)
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
堤 一昭 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (70283835)
中村 薫 芦屋大学, 教育学部, 教授 (80369719)
中村 武司 大阪大学, 文学研究科, 助教 (70533470)
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キーワード | 世界史 / 教養教育 / 教科書 / 高大連携 / コミュニケーション |
研究概要 |
本研究は最新の歴史学の成果を、高校・大学を通じた歴史教育に反映させる取り組みの一環である。現在の日本の学校教育で、事実上世界各地域について満遍なく学ぶ唯一の科目になっている高校世界史を、多くの生徒が部分的にしか学ばなくなっている現状に鑑み、大学(教養課程を中心に、教員養成課程や高度教養教育も展望する)への成果普及を重視する計画である。初年度にあたる今年度は、3名の特任研究員および大学院生若干名を含む事務局を構成し、代表および中心的な分担者、協力関係にある数名の高校教員とともに企画運営や広報にあたった。 活動の中心として、9回の月例研究会と繰越期間を含め2回の特別例会を開き、1学期は従来大阪大学史学系が取り組んできた海域史、グローバルヒストリー、世界史と日本史の接続などのまとめ、2学期は気候変動、開発と疾病、科学と医療などの文理融合型のテーマについて研究発表、討議をおこなった(大阪大学歴史教育研究会報告書シリーズNo.4-5として刊行)。そのほか、7月に北京で開催されたWHA(アメリカ世界史学会)大会での成果報告、翌年4月にソウルで開かれるAAWH(アジア世界史学会)での方向準備など国際発信の取り組み、神奈川県高校社会科研究会世界史部会、北海道高校世界史研究会など国内高校教員組織の集会への講師・報告者派遣にも取り組み、本計画に必要な国内外のネットワーク作りも推進した。 なおこれらの成果の一方で、8月に日本学術会議史学委員会が公表した提言「新しい高校地理・歴史科教育の創造-グローバル化に対応した時空間認識の育成」など高校・大学教育に関する新しい動きが出てきたため、研究課題と成果公表計画の一部を再検討することとして、経費の一部を次年度5月まで繰り越し使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に本計画を推進する体制として、日本史・東洋史・西洋史の3分野の教員・特任研究員や、各地の高校教員を交えた運営体制と、ホームページ・ブログも活用した連絡・広報体制などが構築され、期待通り機能した。月例研究会を大学院の演習としても扱い、院生のグループ発表などの形で研究活動への参加を促した点も成果があがった。 第二に研究内容として、グローバルヒストリーや中央ユーラシア史、海域アジア史、世界史と日本史の連結・統合など従来から検討してきた課題の解説や事項リストをまとめると同時に、環境や科学技術など新しい領域に本格的に取り組むことができた点は、本計画が目ざす教養課程用の教科書作成や、理系的要素も要求する高校の新学習指導要領に対応した教育内容の検討などにとって重要な成果だった。 第三に、一部の見直しのため経費の繰り越し使用が必要になったとはいえ、国内の教育現場や世界に向けた発信も最終的に所期の成果をあげた。代表の桃木が11月に日本学術会議の連携会員に任命され、上記提言を具体化するための委員を委嘱されたことも、本計画の成果を発信する場が広がったことを意味する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降もほぼ同じ運営体制のもと、研究や広報などの活動を継続する。 他方、活動内容の多角化をさらに推進したい。たとえば24年度の初め(4月)には、ソウルで開催されるAAWH(アジア世界史学会)第2回大会で、歴史に教育に関する2つのパネルその他において、高校教員や特任研究員・大学院生を含む成果発信をおこなう予定であり、ここでの韓国・中国やベトナム、アメリカその他の専門家との討議の成果を今後の研究に活かしたい。また国内では、京阪神、神奈川や北海道の教員組織との連携のほか、25年度に委嘱された大阪府高齢者大学校での世界史の通年講座運営に、特任研究員など若手を中心に参画させることで、歴史教育の方法や社会における関心のありかなどを研究するチャンネルを広げていきたい。 取り扱う内容の面では、連携研究者の協力もえながら、1学期にジェンダーと家族、2学期に文化史や宗教史の新しいとらえ方を集中して取り扱うほか、世界史の論じ方についての新しい出版物などを対象とする特別例会なども開き、最終年度に教科書を執筆する準備に結びつけていきたい。
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