研究課題/領域番号 |
23242043
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片山 剛 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30145099)
|
研究分担者 |
小林 茂 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (30087150)
稲田 清一 甲南大学, 文学部, 教授 (60221777)
荒武 達朗 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部 (総科), 准教授 (60314829)
田口 宏二朗 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50362637)
大坪 慶之 三重大学, 教育学部, 准教授 (30573290)
|
キーワード | 伝統中国 / 近代東アジア / 土地制度 / 開発史 / 国際情報交換 |
研究概要 |
11月下旬に追加内定の通知を受け、改めて計画を策定した。まず、中国で続々と復刻されている1930年代・40年代の地政関係の雑誌や政府刊行物のうち、本研究課題にとっては南京市政府が発行していた公報(期間は1927年~1949年。誌名は『南京特別市市政公報』『首都市政公報』『南京市政府公報』等と変遷)がきわめて有用であることが判明した。そこで、これを順次購入のうえ、本課題に関連する記事の目録を逐次作成して研究チーム内で共有するとともに、海外出張で収集する文書(档案)資料と突き合わせながら解析を進めていくことにした。その成果は平成25年度から学界に提供していく予定である。 2月~3月に台湾の国史館で、1930年代半ば~40年代後半の南京市の所有権登記に関する文書(档案)群の収集・解読を行うが、文書群が12,000件と大量である点と1件の文書に多量のデータが含まれて点とに鑑みて、全8区のうち市街地化が古い第4区の文書に絞り、かつ各文書から抽出すべきデータ項目を選別し、フォーマットを作成して調査に臨んだ。登記が申請された案件には、当時の社会問題(女性の遺産相続権、八旗の旗地の処理など)を反映しているもの、したがって学界に紹介する価値の高いものが多数存在することが判明した。これらは、平成24年度収集分とともに、緻密な解読を進め、解題も付して平成25年度にニューズレター等を通じて学界に提供する予定である。 繰り越し手続きを行って実施した南京調査では、1930年代半ば~40年代後半の文書資料を収集した。特に江寧区档案館では裁判文書の収集・解読を通じて、1930年前後における南京市政府の土地問題に対する政策の変化(不在地主と小作農の間に介在する第三者の排除など)を知ることができたのは大きな収穫であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
11月下旬に追加内定の通知を受けたため、実質的な研究活動の期間は12月以降の4ヶ月弱と短期間であった。また、平成24年3月下旬に計画していた南京出張による調査は、南京大学側の都合で平成24年12月に延期して実施した。台湾・南京で行った文書(档案)資料の収集・解読は順調である。とりわけ延期して実施した南京調査では、各種資料収蔵機関の特長に即して十分な事前準備を行って臨んだので、前述したように、江寧区档案館における裁判文書の閲覧を通じて、南京市政府の政策変化に関する知見を得ることができた。なお、収集すべき資料の量がきわめて多いので、収集から解析を経て学界に提供するまでに多少のタイムラグが生じているが、価値の高いものについては平成25年度に公表できる予定である。以上、成果の公表は少し遅れているが、研究目的を遂行するための第一年目の課題はおおむね順調に達成した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年3月下旬に予定していた4名の南京出張を、研究協力者の南京大学側の都合で平成24年12月実施に延期し、科研費の繰越しを行った。この出張については、平成24年度の経費を利用した2名の南京出張と重なるように、南京大学側とも連絡をとりながら計画し、研究チーム全体として効率的な調査となるように工夫して実施した。なお、南京で計画していた農村実地調査のうち、江心洲を対象とするそれは、当該地における工業団地の建設のために農家の立ち退きが進行中のため、条件不十分と判断して中止した。代わりに、長江における面積最大の中洲である八卦洲を対象に実施するために、行政系統を通じた折衝と予備調査を行い、平成25年度に実施することにした。 また、アメリカの議会図書館(LC)や国立公文書館(NARA)等に、近代中国を対象とする多数の地図類が未利用のまま収蔵されていることが判明した。そこで、これについての調査を平成24年度に実施することにした(出張1名)。今後も機会を得てLCやNARA所蔵の近代中国関係の資料を調査する必要がある。
|