研究分担者 |
中野 伸彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (20452790)
岩永 省三 九州大学, 総合研究博物館, 教授 (40150065)
宮本 一夫 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60174207)
小山内 康人 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80183771)
溝口 孝司 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80264109)
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、九州大学大学院比較社会文化研究院に導入された・レーザー溶出型多重検出器誘導結合プラズマ質量分析計(LA-MC-ICP-MS)を用いて、日本・中国・韓国・台湾出土の古人骨歯牙に対し、生育環境を反映するストロンチウム安定同位体比(87Sr/86Sr)分析を実施し、婚姻による移動、広域人口移動、季節的移動を明らかにすることにより、東アジアにおける親族・婚姻システムの解明を目指すものである。そこで、研究の最終年度である本年度は、以下のような点が可能となり、具体的な成果を達成することができた。 ①レーザー溶出型多重検出器誘導結合プラズマ質量分析計(LA-MC-ICP-MS)を用いた歯牙のSr同位体比の局所測定手法を確立した. 四重極誘導結合プラズマ質量分析計(LA-QP-ICP-MS)での分析と比較し, 1桁以上(±0.00010程度 : 2σ)の低誤差で測定可能となり, これまで以上に詳細な議論が可能となった. ②LA-MC-ICP-MSを用いた上記手法により, 群馬県渋川市・金井東裏遺跡, 福岡県小郡市・横隈狐塚遺跡, 福岡大野城市・古野遺跡、モンゴルから発掘した古人骨の歯牙(エナメル質)のSr同位体比分析を行った. その結果, 遺跡所在地周辺にて生育した個体と, そうでない個体とをSr同位体比によって区別できる可能性があることが明らかとなった. この分析結果から、先史・古代の婚姻・移住に伴う人の移動の可能性を示し、各遺跡の含まれる地域社会の復元を行った。特に金井東裏遺跡に関しては、馬匹生産集団と地域社会形成について明らかにした。 ③歯牙のSr同位体比が, 土中の埋没環境下でのエナメル質の劣化により変動することを明らかにし, その結果を国際誌に投稿した. ④研究期間の終了後、2015年1月に東京で開催された国際シンポジウムにて、Sr同位体比分析によって明らかとなった古墳時代の人の移動について成果を報告した。
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