研究課題/領域番号 |
23243003
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
須網 隆夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80262418)
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研究分担者 |
森井 裕一 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00284935)
植田 隆子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10138620)
安藤 研一 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40232095)
菊池 努 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (50241146)
清水 章雄 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70142784)
渡邊 頼純 慶應義塾大学, 総合政策学部, 教授 (70231016)
小川 英治 一橋大学, 商学研究科, 教授 (80185503)
岡部 みどり 上智大学, 法学部, 教授 (80453603)
中村 民雄 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90237412)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日・EU関係 / グローバル・ガバナンス / 日EU・EPA / EU通商政策 / 日EU政治協力 / 日中関係 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、本研究の第4年度に当たり、最終年度における取り纏めを視野に入れて、これまでの研究を具体的な形に結実させていくことを目指した。そのために国内では全員参加の「国内研究会」を開催して、前年度までの成果を基に、各分担者からの報告を受け、今後の日EU関係を様々な角度より検討した。国外では、例年通り、「日・EU会議」をブリュッセルで開催し、さらに「法学系ワークショップ」をベルギーで開催し、海外の研究者・政策担当者と活発に議論を交わした。詳細は、以下の通りである。 第一に、分担者による「国内研究会」を4回開催した。すなわち、6月13日は、外務省からの報告者2名より、日EUEPA交渉につき報告を受け、その後今後の進め方を議論した。その結論に従い、9月12日は、「日EU関係の歴史的変遷」につき、経済・政治・法律各分野から1970年代以降につき報告・議論し、12月19日は、「日本以外のアジアとEU」として、EU及び加盟国ドイツの対中国政策、アジアの通商秩序と制度連携を政治分野から報告・議論し、3月5日は、「世界貿易の文脈での日EU関係」として、法律分野から報告・議論し、時間的・領域的・主題的に、様々な角度より日EU関係を検討した。第二に、11月16日に、ブリュッセルで「日EU会議」を開催し、経済・政治協力の強化をテーマに、研究分担者3名が報告し、アジア・太平洋地域の新たな地域秩序、日EUFTA/SPA、直接投資等を議論した。第三に、来日中のルーヴァン大学のJan Wouters教授を招請して、1月13日に、EUの人権外交について「公開ワークショップ」を開催した。そして第四に、分担者・国内外の研究協力者(ヨーロッパ・中国・韓国)の参加を得て、2月11~12日に、ルーヴァン大学(ベルギー)で第2回「法学系ワークショップ」開催し、普遍的な価値の共有に基づく、国際秩序の是非を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度も、昨年度に引き続き、「国内研究会」、ブリュッセルで開催する「日EU会議」、「法学系ワークショップ」を開催した。Jan Wouters教授を招請したワークショップも含めて、1年間の研究計画は、ほぼ円滑に実施することができた。特に9月以降の3回の国内研究会では、研究分担者ほぼ全員(在外研究中の者を除く)が報告した。その結果、パワー・シフトの中での日EU関係を取り巻く、様々な問題について、研究分担者間において理解を共有でき、その上で、今後の日EU関係について学際的な充実した議論を行うことができた。これらの成果により、EUが有するアジア太平洋地域の安全保障についての利益、東アジア地域における安全保障の枠組の制度化の意義、EUの価値外交の法的根拠、パワー・シフトを背景にした中国の既存の国際秩序の「迂回」行動などの貴重な視点を獲得することができ、各分野の相互関係を考慮しながら、各分野を如何に連携させるか、または如何に意図的に連携を分断するかという課題に対する回答に、最終年度において到達するための準備を、ある程度まで行うことができた。昨年度の報告書で、学際的議論による全体的統合が不十分であることを指摘したが、十分かは別として、各分野の統合への努力を具体的に開始できたことは、今年度の成果と評価している。 また、ヨーロッパで開催した「日EU会議」と「法学系ワークショップ」も、昨年度と同様に、ヨーロッパ・東アジア各国との意見交換の場として機能した。前者では、日中韓三国協力事務局という日本でもあまり知られていない組織の活動を理解し、それに対するEU側の積極的反応を知ることができた。後者でも、普遍的価値の相当程度の共有とそれを具体化する規範レベルでの深刻な対立という構図を認識できた。後者は、昨年に続く2度めの開催であったが、明らかに議論の水準が向上していることが感じられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、「国内研究会」、「日EU会議」という既存の枠組を利用して、研究分担者間で、今後の日EU関係を学際的に議論し、最終的な提言に向けた取り纏めを行うとともに、平行して、国際会議・ワークショップを、日本又は国外で、適宜開催し、提言の基本的方向性の妥当性を、招請した海外の研究協力者等との議論によって検証するとともに、その内容を充実・洗練させていくことを、基本的な研究の推進方策とする予定である。なお、「法学系ワークショップ」は、昨年度で終了させ、その成果のヨーロッパにおける公表(英文)を、研究協力者の協力を得ながら準備する。 具体的には、5月以降、国内研究会を数回開催して、昨年度までの研究によって明らかになった課題を考察し、提言の中身を次第に練り上げていく。その過程に資するために、8月には、研究協力者であるMario Telo教授(ブリュッセル自由大学)、Dimitri Vanoverbeke教授(ルーヴァン大学)を各招請して、第1回の国際ワークショップを開催し、研究分担者による報告に対するコメントを得ることにより、日本側の政策提言の妥当性を確認する。第1回のワークショップの結果、さらに第2回の国際ワークショップの開催が必要である場合には、適当な時期に、それを開催する。 他方、11月には、昨年度に引き続き、日EU会議をブリュッセルにおいて開催し、日EU関係の経済通商面(日EUEPA、国内規制の調和など)と政治協力の側面(日EUSPA、東シナ海における法の支配など)を中心に議論し、日EU協力の更なる発展の可能性を追求するとともに、日EU関係に関する、ヨーロッパ側政策担当者の構想を確認する機会とする。 なお、これまでの日EU会議の成果を英文で公表すべく準備するとともに、日EU関係に係る、本年度までの研究成果(各分野の理論的検討と具体的提言)を公表するための準備をも開始する。
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