研究実績の概要 |
研究代表者は、数論・代数学のアルゴリズム的側面として、高速な数値積分アルゴリズムを開発した。Niederreiter-Xingによる代数曲線の有理点を用いた(t,m,s)ネットに対し、スクランブルと呼ばれる変形を行い、研究代表者が導入した「WAFOM」という評価基準により選定された点集合を用いて準モンテカルロ積分を行う。なめらかさの高い関数に関しては、既存の数値積分法よりも高速であることを実験的に確認した。この方法は次元が高くなると有効でなくなるが、WAFOMへのパラメータの導入により16次元程度まで有効な点集合を構成することができた。また、指数関数の準モンテカルロ積分誤差とWAFOMは定数倍を除いて一致することを示した。純粋数学の側面では、普遍的楕円曲線から誘導されるモチーフをR.Hainと構成した。Deligneらの混合Tateモチーフが種数0の理論であるのに対し、本研究で導入されたモチーフは種数1のモジュライ空間から得られる理論である。このモチーフはリー環の構造をもっており、楕円ポリログに対応する生成元をもち、一部の関係式はcusp formにより与えられる(論文投稿中)。 連携研究者玉川らは、有限体上の代数曲線の双有理グロタンディーク予想について、より精密化した結果を得た。成果はAdv. Math.に発表されている。星は、双曲的代数曲線のpro-l基本群への外ガロア表現の核に対応する体Kの研究のため、l-moderate点の概念を導入した。このような点に対応する体がKに含まれることと、ある特殊なケースでこれらの体の合併がKに一致することを示した。
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