研究課題
マウスおよびラットは様々な技術を用いて実験解析が可能な疾患モデル動物として極めて重要であり、蓄積される多様な情報を効率的に整理統合し、研究コミュニティへ提供できる情報システムの開発が望まれる。本課題では、マウス・ラットにおける個体レベルの特性情報をシンプルに記述し、統合整理できるシステムの開発、検証を行うことを目指している。H24年度は、前年度に行なったデータベースの基本設計および、プロトタイプを拡張して、ヒト疾患データを導入し、マウスおよびラットの表現型から関連疾患を検索する基本プログラムを作成した。1) ヒト疾患データの導入東京大学にて開発された、疾患定義と、疾患に含まれる病態(異常状態)の推移のデータベースである臨床医学オントロジーを本システムに導入した。また、50疾患モデルケースのリストアップし、マウス・ラットにおける表現型に用いられる定性値と、疾患の異常状態との同等性を定義した。2) マウスおよびラットの表現型から関連疾患を検索する基本プログラムの作成上記の同等性情報を参照して、各異常値から、対応する異常状態を含む疾患を検索し表示するプログラムを作成した。これらの拡張により、本システムは、数値データとして記述されたマウス・ラットの表現型データを、あらかじめ定義された複数の条件に照らして定性値化し、これが異常と判断される場合のみ、生物横断的に統合できる。さらに、その異常が臨床医療オントロジーに定義されている疾患と関連しているかどうかを検索する事ができる。当アプリケーションのユーザーは、詳しい医学知識を持たずとも、マウスおよびラットの測定データから、それと関連する疾患とその対応の根拠の情報を簡単に得る事ができる。
2: おおむね順調に進展している
計画にある通り、基本データの作成を行った。ヒト疾患データの導入および、表現型データと疾患との関連性を推論する基本プログラムの開発ができた。また、本研究が示す方法論を用いて、マウス、ラット、ヒトの表現型あるいは症状が相互に参照可能な形で正しく連結されていることが確認できた。
マウスやラットの表現型データと関連づけるには、臨床医学オントロジーで示されるような、疾患に含まれる部分病態の連鎖が必要であり、Human Phenotype Ontologyなど、他の疾患オントロジーでは不十分であることが判明したため、今後は臨床医学オントロジーとの連結にフォーカスを当ててプロジェクトを進めることを検討している。次年度は、データ構造の見直しを行い、変更されたデータ構造に従って、必要な場合はデータの再格納および、検証プログラムの修正を行う。また、当初計画していたゲノム、KEGGパスウェイ、Gene Ontologyなどの広範囲のデータの格納を検討するのではなく、実験動物研究と疾患研究のマッチングを行なえるような、公開Webページを作成し、コミュニティへに直接的に貢献を行なえるようにする。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件)
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