本研究は日本の近代化を支えた製糸業を対象とし,製糸技術の変遷と技術の工学的意味について検証することを目的とした.具体的には,日本の輸出生糸の主産地であった諏訪岡谷地方でイタリア式繰糸技術をベースに改良・量産された諏訪式繰糸機に注目し,繰糸鍋,糸道機構の特徴を工学的な見地から解析および機能の検証を行った.その結果,稲妻式撚り掛け技術は生糸の品質を維持しつつ糸切れ発生を低減し,生産効率を優先した技術思想により開発されたこと,また繰糸鍋については,当時の窯業技術を元に給排水や緒数の変化に対応した種々の繰糸鍋が開発されていることが,クラスター分析による特徴別分類から技術的意味づけを行った.
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