研究課題/領域番号 |
23310179
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
鈴木 玲治 京都学園大学, バイオ環境学部, 准教授 (60378825)
|
研究分担者 |
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80153419)
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (80305557)
今北 哲也 京都大学, 生存基盤科学研究ユニット, 研究員 (80599449)
増田 和也 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (90573733)
島上 宗子 京都大学, 生存基盤科学研究ユニット, 研究員 (90447988)
|
キーワード | 生態学 / 土壌学 / 民俗学 / 在来知 / 地域活性化 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
1.火入れ前後の土壌特性値の変化と休閑期の植生回復状況 余呉町の焼畑では、火入れ直後に表層土の交換性塩類・有効態リン酸の増加と、アンモニウム態窒素の増加が認められた。前者は焼却灰からの養分添加効果、後者は焼土効果による有機態窒素の無機化の結果であると思われる。なお、火入れ時の地表面の温度は、最大270℃から最低60℃まで大きなばらつきがあり、これらの養分添加効果や焼土効果も空間的に不均一であった。また、ササ優占地であった土地を焼畑に切り拓いた結果、1年後には先駆性の樹木や木本の萌芽再生個体が優占する林へと遷移しており、焼畑による林相転換の可能性が示唆された。 2.日本の焼畑耕作に受け継がれた技術や知恵の体系化 余呉町の焼畑で栽培しているカブの生育は、火入れの時期、斜面方位、耕起の有無などの要因に影響を受けていたが、ある年はプラスに働いた要因が別の年には全く意味をなさないこともあり、極端な気象条件下でこそ意味を持つものが多かった。焼畑のように、時間的・空間的に不均一な農業においては、環境の不確実性に対するリスクをいかに最小限に抑えられるかが重要であり、焼畑の技術や知恵が「収量の最大化」ではなく「リスクの最小化」を目指しながら培われてきた結果であることが示唆された。 3.土地利用の履歴と焼畑の歴史の再構成 過去の空中写真判読により、余呉町の焼畑耕作や休閑林の利用がどのような変遷を経て現在に至ったのかを解析中である。これらは、余呉町の森づくりの将来像を描く上で重要な基礎資料となる。 4.東南アジアとの比較研究・相互訪問準備 文献調査により、東南アジアの焼畑に関する先行研究事例をとりまとめ、日本の焼畑との共通点、相違点を検討した。また、インドネシアで焼畑を営む人々を余呉町へ招聘するための準備を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画に沿って、順調な調査研究活動を展開中である。また、火入れや収穫などの焼畑体験会には、大学関係者・NPO・マスコミなど、多くの人々が参加し、余呉町の人々とも良好な関係を構築できている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、放置された里山を焼畑に切り開くことで森林再生を促し、山地での食糧生産を中山間地域の森づくりにつなげていくことを目指している。短期的には火入れの効果を活かした石油資源への依存度の低い持続的な食料生産、長期的には荒廃する中山間地域の森づくりと地域活性化に果たしうる焼畑の可能性を実証的に示し、地域の目指すべき森づくりの基本計画を構築する。平成24年度は、平成23年度に実施した研究内容に加え、土地利用履歴の異なる焼畑休閑地での植生調査を行う。また、インドネシアで焼畑を営む人々を余呉町に招聘し、地域に生きる人々自らが研究の主体として地域に関わり、自らが目指すべき地域の将来像を研究者と共に考える場を創出することで、研究者の発想を大きく超える新たな知の創造を目指す。
|