研究概要 |
1読解対象の収集 日本語学習者の読解困難点や読解技術を分析するには,読解対象である「読む素材」の選択が重要である。それぞれの学習者にとって実際に読む必要があるものを選ばなければ,実践的な読解教育を行うのに役に立つ読解困難点や読解技術の解明ができないからである。 本年度は,次のような人を対象に読解対象の収集を行った。 (1)中級レベルの日本語学習者:主に日本の大学や専門学校の在学者にデジカメを渡し,自分が読む必要があるものを撮影してもらったほか,読む必要があるインターネットのページの情報も収集した。 (2)上級レベルの日本語学習者:日本の大学院在学者を対象に,自分が読む必要のある学術論文や専門書をあげてもらう聞きとり調査を行った。 (3)大学教員:主に経済学,経営学,社会学など,社会科学系の大学教員を対象に,各専門分野の留学生が読む必要がありそうな代表的な学術論文をあげてもらう聞きとり調査を行った。 (4)介護施設職員:介護施設で責任のある地位にある職員に聞き取り調査を行い,介護施設で働く日本語非母語話者の職員が読む必要がある日誌などの情報を収集した。 2読解困難点を解明するためのインタビュー調査 上級レベルの日本語学習者である大学院生を対象に,自分が読む必要がある学術論文を読んでもらい,その読解過程をすべて話してもらったり,質問に答えてもらったりするインタビュー調査を行った。 その結果,上級学習者でも,語レベル,文レベル,文章レベル,それぞれの読み誤りがあり,次のような読み誤りのメカニズムがありそうだということが明らかになった。 (5)上級学習者はさまざまな推測のストラテジーを使って読んでいるが,間違った推測をすることがある。その間違った推測とつじつまが合うように,他の部分も間違った推測をすることがある。そのようなときに読み誤りが起きやすい。
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