研究課題/領域番号 |
23320147
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
永井 晋 神奈川県立歴史博物館, その他部局等, 専門学芸員 (00443408)
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研究分担者 |
永村 眞 日本女子大学, 文学部, 教授 (40107470)
山家 浩樹 東京大学, 史料編纂所, 教授 (60191467)
山地 純 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, 研究員 (70176410)
西田 友広 東京大学, 史料編纂所, 助教 (90376640)
西岡 芳文 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, その他 (90443407)
井上 和人 関東学院大学, 文学部, 准教授 (30613971)
岡本 綾乃 (道津 綾乃) 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, 研究員 (40443410)
高橋 悠介 神奈川県立金沢文庫, その他部局等, 研究員 (40551502)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金沢文庫文書 / 称名寺聖教l / データベース化 / 紙背文書論 |
研究概要 |
平成25年度は、5年計画の中間にあたる年なので、日本古文書学会と神奈川県立金沢文庫・関東学院大学の連携により、日本古文書学会を関東学院大学に誘致して大会報告・例会報告(全3日のうち、第1日目・第2日目)を実施し、初日の基調講演2本のうち1本を永井晋が「金沢貞顕書状の編年的特質」の演題行った。第3日の史料見学会では代表的な金沢文庫文書及び称名寺聖教40点を金沢文庫大会議室にて原本見学会を実施した。当日は、科研スタッフと金沢文庫職員が個々の史料に対する質問に対して応対した。また、システム開発委託業者が大会議室にブースを設置し、平成27年度に完成を目指しているデータベースの検索イメージと画面表示のデモンストレーションを行った。大会基調講演・原本閲覧・データベースのデモをもって、中間報告会に代わるものとした。 データベース構築は、昨年度までに9割以上の入力を終えている古文書本文の校正、撮影の終了している画像の入力と書誌データ(史料データカード)とのリンク付、該当する部分の表示の仕方の検討など、翻刻テキストデータ(暫定版)と書誌データと画像表示の関連づけをどのように行うかが中心となって進んでいる。 個別データとしては、新出文書の翻刻と史料紹介、未翻刻文書の読解など地道な作業は進んでいるが、入力作業はこの部分がやや遅れている。 重要文化財「金沢文庫文書」と重要文化財「称名寺聖教」との接続については、一群の史料の塊としては表示できるものの、一冊のテキストとして聖教をどこまで復元することができるかが課題となっている。画面表示における連続性の表現を、システム上、どこまで可能にするかは次の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
書誌情報とフルテキストデータベースを中心とした文字列検索データベースであれば、県のサーバに接続して公開することが可能な水準まで準備が進んでいる。その意味で、本科研は最低限のレベルでの公開の水準には到達しているので、画像情報の公開の仕方と古文書の紙背に残る聖教の復元研究とその成果の表示の仕方に重点がうつっている。精度の向上の段階に入っているので、あと2年間の課題はより精緻なデータベースに磨き上げていくことである。 現在進めている作業は、文字情報をより精緻なものとするため、翻刻データの本文校訂を行うこと、聖教の紙背文書として残ったものが多いので、史料の塊としての聖教紙背文書を確実な集団とすること、題未詳聖教として聖教名不明の扱いとしているものを可能な限り減らすことなど、より効率的な検索が行えるように史料群の整備を進めていくことである。それと共に、古文書紙背の聖教の画像表示をわかりやすくする工夫も重要である。 古文書紙背の聖教は、本来は一枚の料紙に書かれた書状が、その裏面を聖教として再利用する際に切断しているので、古文書として復元された料紙の裏側に残っている文言のどこからどこまでが検索でヒットした部分にあたるのかを明示しなければならない。また、綴帖装のように左側と右側が頁として連続しない場合にどのように表示するかなど、古文書の紙背に残った聖教の見せ方は、工夫を必要としている。この部分をどうするかが、本科研の最後の大きな課題となると考えている。 基本情報は、荒削りながら、余裕をもって完成にたどりつける目途がついているので、このまま推し進めていったとして、どこまで精緻に仕上げていけるかが今後の2年間の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までは、金沢文庫他に置かれたスタンド・アロンの端末にインストールしたシステムでデータ入力と関連づけの作業を行い、データベース構築を委託している業者のもとで行われているサーバ側の整備によって、データ入力とシステム構築が進められてきた。本年度は、県のサーバーとの接続を目指した協議が始まる。この協議によって、最終的な運用環境の方向性が定まっていく予定である。それと共に、システムを接続するための金沢文庫内の環境整備の準備が必要となる。 データベース構築は、最終的な完成を目指した詰めの作業を進めていく段階に入っている。基本的には、当初に提出した計画通りの行程で進んでいるので、このまま継続して作業を進めていけば問題なく完成させられると考えている。書誌情報の校訂・翻刻テキストの精緻化・画像データの関連づけの不具合の点検、検索のヒット率を高めるための文字情報の整備である。この事業に関連して、金沢文庫文書及び称名寺聖教の史料読解と整備も進んでいる。冊子体の目録や資料カードをベースとした収蔵史料管理から、デジタル情報による史料管理へと移行すること、インターネットを通じた外部からの閲覧に対応できる水準で史料データベースを公開していくことなどを当面の目標としている。 その上で、外部からのアクセスが容易になることは、今まで以上に広範囲な領域からの質問・要望・意見が増えることを意味している。この双方向性のやりとりは、博物館という業界を越えた隣接する専門分野から起こってくるので、その領域で蓄積されている情報がデータベースを管理する担当者のもとに蓄積されていくことになる。金沢文庫管理史料の情報面での流動性の高まりは、多様な情報の蓄積につながる。
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