研究課題
平成25年度は、第1に、前年度に引き続き、書面に関する法制史研究および比較法研究を行った。まず、ローマ法における書面の執行力について、特定の書面に一定の効力が認められていた可能性を示す史料をみた。それによれば、4世紀以降、「公に作成されたとみられる文書」に基づく執行を国家が黙認せざるを得ない状況が生じたと考えられることがわかった。つぎに、近代日本法の形成期における公正証書の効力について、公正証書制度導入期における裁判例の研究を行った。その結果、明治20年代に、公正証書の効力を重視する裁判例が現れており、公正証書の効力に関する新たな法理が生まれた可能性があることが判明した。さらに、ドイツ法およびフランス法の比較法研究を行った。ドイツでは、最近の有限会社法改正により、商業登記簿上の社員名簿に公信力を与えられたこと、また、フランスでは、取得時効に必要な占有の証明に公証人証書を用いる立法の改正案が出されていることが明らかになった。第2に、現代日本法において、書面要件が課されている法制度を個別にとりあげ、書面の果たすべき役割に照らして書面要件が必要十分であるかどうかについて検討を行った。まず、書面要件がその機能に比して過重と考えられる場合として、たとえば、法人や信託など、一種の継続的な財産管理組織における、各種の報告書等の文書の作成・開示とその保存義務がある。すなわち、規模の小さな法人や、定まった利害関係者も存在しない公益法人について、ほぼ株式会社準拠の書類作成・開示・保存の義務が一律に課すことには疑問がある。他方で、書面に新たな機能を付与する可能性がある制度の存在も明らかになった。たとえば、ドイツ有限会社法の改正は、わが国の株券発行会社ではない株式会社における株主名簿につき、取引安全の観点から、現在とは異なる書面の役割を付与する可能性を示唆している。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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判例セレクト
巻: 2013II ページ: 19頁~19頁
法学教室
巻: 394号 ページ: 4-13
法律時報
巻: 85巻5号 ページ: 11頁~16頁