研究課題/領域番号 |
23330201
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宇野 彰 筑波大学, 人間系, 教授 (10270688)
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研究分担者 |
室橋 春光 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 特任教授 (00182147)
山田 一夫 筑波大学, 人間系, 准教授 (30282312)
守口 善也 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (40392477)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 読み / 発達性「読み」障害 / 計算論的研究 / 臨床的研究 / 脳科学的研究 |
研究実績の概要 |
臨床的研究 : 就学前のひらがなの「読み」の習得には、自動化能力と音韻認識能力が強くかかわり、有意な予測因子であった(猪俣ら2014)。また、音読潜時を指標に、語彙性効果と文字長効果を検討した結果、小学1年生と2年生での間で、一文字ずつ読む非語彙方略から、文字列全体を処理する語彙方略に大きく音読方略が変化したことが分かった(三盃ら2014)。
生理学的研究 : 高速提示される文字列としてひらがなで構成される単語及び非語、並びに記号列を用い、これらについては無視させる数種類の課題を設定して、刺激提示後約170ミリ秒に出現するERP成分であるN170のふるまいについて検討した。その結果、ひらがな表記に対しては、言語的処理の有無にかかわらず、初期的段階で自動的な知覚的カテゴリー化処理が行われるものと考えられた。しかし文字列に対して自動的に言語的処理が開始されるのではなく、視覚的注意が言語的処理の進行に密接に関与することが示された。これらの結果から、読みの困難には視覚的注意のありかたが強く影響しているものと想定される。
脳機能研究 :fMRIを用いた実験により、漢字を視覚的にとらえて、徐々に文字として処理する順序性に従って、左大脳の後部から徐々に前方へ処理する場所が移動することが分かった。一方、右大脳半球では、図形と文字を処理する場所に差がなかった。現在Brain&Behaviorという英文誌にて審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的研究に関しては、調査によるデータ収集は順調に進んでいる。データをまとめ原著論文として完成させる作業については、日本語では順調にすすんでいるが英文では、まだ十分な成果が出せていない。しかし、英文誌で審査中であるため、最終年度には成果が期待できる。科学的な指導法の開発については順調である。日本語ではあるがひらがな、カタカナの習得法、および漢字書字に関する指導法が完成している。一方、計算論的研究に関しては、予定よりも遅れている。シミュレイションするために必要な実証的研究がまだ不足していることが分かったためである。最終年度中には完成させたい。脳機能研究に関しては、やや遅れている。NIRSでは、精度の高いデータが得られなかったため、fMRIを用いた研究に移行したためである。しかし、一つ目の研究は成功裏に終了し、次の実験に移るところであり、なんとか予定に追いつくのではないか、と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は、臨床的には、ひらがな、カタカナの習得に関する科学的な指導方法について論文を完成させる。3つの条件を満たせば約7週間でほぼ100%習得でき、1年後も維持できる方法であるため、社会的な貢献度が高い成果であると思われる。また、漢字の音読を予測する因子についても調査が行われる。また、英語の読み書きに関わる認知能力についても明確になると思われる。計算論的研究としては、小文字書きする拗音と促音の処理に関して現在躓いている。実証的データを収集し解決したい。脳機能研究では、漢字処理が文字特異性があるのか、それとも非言語的な図形と同様の処理なのかについて検討する。二編目の論文を英文誌に投稿する。
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