研究課題
基盤研究(B)
本研究は、難解析性タンパク質を分子標的とした創薬研究を展開するとともに、ドラッグライクな複素環化合物の効率的合成法の確立と応用を実践することによる創薬基盤技術の革新を目的としている。平成23年度は、ケモカイン受容体CXCR4のX線結晶構造解析データをもとにCXCR4拮抗剤の受容体結合様式を解明するとともに、金触媒を用いた新規複素環骨格構築反応を利用したCK2阻害剤の開発研究を行った。CXCR4選択的拮抗剤FC131の活性コンフォメーションと受容体結合様式を解明する目的で、4つのアルケン型ジペプチドイソスターを利用した構造活性相関研究を実施した。FC131およびその誘導体の活性評価により、活性発現の鍵となるD-Tyr-Arg部位がトランス配座で受容体と相互作用していることが示唆された。また、NMR解析により、各種誘導体の溶液中での構造は同一ではなく、一部のペプチドミメティックを含む誘導体がFC131とは異なる特徴的なコンフォメーションをとることを明らかにした。さらに最近X線結晶構造が報告されたCXCR4との結合様式を解析したところ、FC131とその誘導体の多くはよく似た相互作用様式で受容体と結合している一方で、溶液中で異なる構造をとる誘導体はD-Tyr-Argジペプチド部位の配座が異なる別の相互作用様式で受容体と結合していることが示唆された。また、プロテインキナーゼCK2に対する高活性阻害剤の創製を目指して、金触媒による三成分カップリング-環化反応を利用して得られるジヒドロピラゾール骨格を用いた構造活性相関研究を展開した。中心骨格上の異なる位置に置換基を配置した各種誘導体のうち複数のベンゾインダゾール骨格を有する化合物に数十nMのIC50値で酵素阻害活性を示す新規阻害剤を見出した。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度の研究では、研究グループが見出したCXCR4拮抗剤FC131とその誘導体の受容体結合様式を解明し、新規誘導体の創製に向けた新たな指針を得た。また、構造活性相関研究に有効な複数の含窒素複素環合成プロセス確立し、その一部が酵素阻害剤の骨格として有用であることを確認した。得られた活性化合物は今後の構造最適化研究のリードとなるものであり、今後の研究の発展によりさらに優れた誘導体の創製が期待される。全体を通して、3年計画の1年目で予定していた実施計画通りの進捗が達成できたと考えられる。
平成23年度の研究において得られたCXCR4受容体-FC131誘導体の結合様式に関する知見は、今後のCXCR7選択的リガンドの分子設計に活用する。スクリーニングとCXCR4拮抗剤からの構造最適化の両面から新規CXCR7リガンドの探索を展開し、リガンド-受容体の結合様式に関わる知見が得られるよう構造解析と化合物合成を並行して展開する。また、金触媒を用いた三成分カップリング-環化反応は、ジヒドロピラゾール構造以外の含窒素複素環化合物合成への応用が期待されることから、構造多様性を視野に入れた展開と活性物質創製の2つの展開を継続する。
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