研究課題/領域番号 |
23390025
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 信孝 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60109014)
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研究分担者 |
北浦 和夫 神戸大学, その他の研究科, 教授 (30132723)
大野 浩章 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30322192)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分子設計 / ドラッグライク / CXCR4 / ケモカイン受容体 / 複素環 |
研究概要 |
本研究は、難解析性タンパク質を分子標的とした創薬研究を展開するとともに、ドラッグライクな複素環化合物の効率的合成法の確立と応用を実践することによる創薬基盤技術の革新を目的としている。平成24年度は、ケモカイン受容体CXCR7に対するリガンド探索のためのスクリーニングを行うとともに、新しい複素環構造をスキャフォールドとするCK2阻害剤の開発研究を展開した。 これまでに実施したCXCR7リガンドのスクリーニングにより得られたthieno[3,2-c]thiochromene骨格を有するヒット化合物について、各部分構造の受容体結合への寄与を調べる目的で複数の誘導体を設計・合成した。その結果、縮環の少ない一部の誘導体で同等の活性が認められたものの、各部分構造を変換した誘導体はいずれも受容体結合活性を示さず、この骨格からの構造最適化が適用できる範囲が限定的であることが判明した。また、CXCR7受容体モデルをCXCR4のX線結晶構造解析データからのホモロジーモデリングにより取得し、CXCR7への結合が予測された化合物群について生物活性を評価したところ、複数の新規CXCR7リガンドを同定した。 また、構造活性相関研究に有効な複素環合成プロセスの開発を目的として、ピラゾロインドール骨格の効率的な合成法の開発に取り組んだ。金触媒を用いた三成分カップリング-環化反応を利用によりジヒドロピラゾール環を構築後、ルテニウム触媒を用いた分子内C-Hアミノ化反応を経て効率的にピラゾロインドール骨格を構築するプロセスを確立した。このプロセスを経て合成した多数の誘導体の中から約60nMのIC50値でCK2阻害活性を示す2化合物を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究では、スクリーニングにより得られたCXCR7リガンドのヒット化合物の構造活性相関研究により、受容体結合に必要な構造要素を明らかにした。また、複数のCXCR7リガンドの受容体結合様式を分子モデリングの共同研究により明らかにした。さらに、ピラゾロインドール骨格の簡便な化学合成法を開発し、この骨格がキナーゼ阻害剤の有力なスキャフォールドになりうることを明らかにした。これらの知見は、ペプチド性・非ペプチド性受容体リガンドや酵素阻害剤に広く利用可能なものであり、今後はCXCR4/CXCR7やCK2以外の新たな標的分子に対する活性物質の創製にも応用したい。 全体を通して、3年計画の2年目で予定していた実施計画通りの進捗が達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までの研究において得られたCXCR7リガンドに求められる構造要求性と受容体結合様式に関する知見を活用して、新規CXCR7選択的リガンドの創製研究をさらに発展させる。スクリーニングから得られた低分子化合物の構造最適化だけでなく、ペプチド性化合物の探索・創製にも展開する。また、これまで2年間の研究で得られた新しいドラッグライクな複素環骨格を、CK2以外の魅力的な創薬標的に対する機能調節分子の創製にも応用し、方法論の有用性の実証研究を発展させる。化合物の骨格の独自性に加えて、実用性の観点から優れた物理化学的・薬剤学的性質を有する化合物を設計するための指針の獲得を目指す。
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