研究概要 |
Foxp3+制御性T細胞(Treg)は免疫抑制機能にコミットした細胞系列であり、環境からの様々な擾乱に対しても安定に分化状態を維持することで自己免疫寛容と免疫恒常性を保証している。我々は、Foxp3+ T細胞の一部は環境からの擾乱に対してFoxp3発現を失ってヘルパーT細胞(exFoxp3 Th)へ分化する可塑性を示すことを報告してきた。今年度は、可塑性を示すexFoxp3 Th細胞の起源と本態について更に研究を進めた。 1. パイエル板follicular helper T細胞の起源 以前我々はFoxp3+CD4+ T細胞をT細胞欠損マウスに移入すると、パイエル板(PP)においてFoxp3- follicular helper T (Tfh)細胞に分化してIgA産生を効率的に促進することを報告した(Science, 2009)。独自に樹立したFoxp3+ T細胞のfate mappingマウスを解析したところ、PP Tfhの約10%がFoxp3+細胞に由来したが、その割合はTfh以外のエフェクター・メモリー細胞と比較して同程度であった。さらに、T細胞欠損マウスに移入することによって分化するPP Tfhは、胸腺由来Foxp3+ T細胞ではなく、末梢において一過的にFoxp3を発現する細胞であることがわかった。以上の結果から、PP Tfhの一部はFoxp3+ T細胞に由来するものの、それらはTregというよりも末梢において一過的にFoxp3を発現する細胞であると考えられた。 2. exFoxp3 T細胞のTCRレパトア解析 exFoxp3 T細胞がTregに由来するのか、活性化T細胞に由来するのかを個体レベルで明らかにするために、次世代シーケンサーを用いたTCRレパトア解析を行った。CD44high exFoxp3 T細胞はFoxp3+ T細胞よりもCD44highエフェクター・メモリーT細胞と類似したTCRレパトアを発現することが明らかになり、exFoxp3 T細胞はTregではなく主に活性化T細胞から分化することがわかった。
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