研究課題/領域番号 |
23390232
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 良輔 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90216771)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子 / ゲノム / 神経科学 / 脳神経疾患 / 発現制御 |
研究概要 |
α-シヌクレイン(α-Syn)の産生を低下させる低分子化合物をスクリーニングする方法として、ルシフェラーゼアッセイ系を使用した。α-Syn遺伝子と遺伝子発現調節領域を十分に含むα-Syn BACクローンを用いて、大腸菌内相同組み換えによりα-Syn遺伝子exon2内のORFに細胞外分泌性ルシフェラーゼ遺伝子を挿入し、さらに神経系cell lineにトランスフェクションすることにより、ルシフェラーゼ分泌安定株を作製した。この安定株を利用して、これに約1000個からなるFDA既存薬ライブラリー、あるいは使用経験のある約9600個からなる低分子化合物ライブラリーを付加し、プレートリーダーを使用してルシフェラーゼアッセイを行っているが、FDA既存薬ライブラリーの第一次スクリーニングが終了した段階である。現在FDA既存薬ライブラリーによる2次スクリーニングを施行中である。次に、ヒトPDの病態・病理を忠実に再現するマウスの樹立に関して、α-Syn BAC TgマウスとIRP-2 Tgマウスの交配を行った。現在、α-Syn (+/+)・IRP-2 (+/-)、あるいはα-Syn (-/-)・IRP-2 (-/-)である野生型マウスを含めた各遺伝子群(4群)10匹以上のマウスを作製した。現在、約15か月齢のlittermateを使用した網羅的な行動解析を終了し、結果を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
α-シヌクレイン(α-Syn)の産生を低下させる低分子化合物スクリーニングに関して、α-Syn BACクローンを用いて、大腸菌内相同組み換えにより細胞外分泌性ルシフェラーゼ遺伝子を挿入し、さらに神経培養細胞にトランスフェクションすることにより、ルシフェラーゼ分泌安定株を作製した。BAC cloneの改変と神経系培養細胞における安定株作製はほとんど報告がなく、やや時間を要したが、最終的にスクリーニングに耐えうる細胞株を取得できた。この細胞株を用いたルシフェラーゼアッセイ系とFDA既存薬ライブラリーを組み合わせた低分子化合物スクリーニングに関しても、1次スクリーニングが終了している。パーキンソン病の病態・病理を忠実に再現するために作製された、α-Syn BAC TgマウスとIRP-2 Tgマウスの交配マウスに関しては、15か月齢において網羅的な行動解析バッテリーを終了しており、概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
α-Synの産生を低下させる低分子化合物のスクリーニングに関して、ルシフェラーゼアッセイ系とFDA既存薬ライブラリーを用いた解析については、2次・3次スクリーニング、あるいは毒性試験を施行し、ヒット化合物を取得する。さらに神経系培養細胞に投与し、α-Syn のmRNAあるいはタンパク定量を行い、効果を確認する。同時に使用経験のある約9600個からなる低分子化合物ライブラリーを用いた解析も行う。パーキンソン病の病態・病理を忠実に再現するために作製された、α-Syn BAC TgマウスとIRP-2 Tgマウスの交配マウスに関しては、15か月齢において網羅的な行動解析バッテリーを行っており、結果の解析を行う。また線条体シナプトソームを分離し、DAT・TH・VMAT2の定量、HPLCを用いたドーパミンとその代謝物の定量を行う。組織学的には線条体におけるドーパミン神経終末・中脳黒質におけるドーパミン神経細胞体の形態変化を解析する。さらにドーパミン神経細胞数の測定を実施する。これらの交配マウスに低分子化合物スクリーニングで得られたヒット化合物の慢性投与を行う。パーキンソン病発症マウスが得られない場合は、α-Syn BAC Tgマウスにロテノン・MPTPなどの薬物を投与し、これに対して得られた化合物を投与することで毒性軽減効果を確認する。
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