研究課題/領域番号 |
23403010
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大塚 雄一 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (40314025)
|
研究分担者 |
小川 泰信 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (00362210)
細川 敬祐 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (80361830)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | GPS / GNSS / 電離圏 / シンチレーション / 北極域 / 電離圏擾乱 / 国際研究者交流 / ノルウェー |
研究概要 |
GPSをはじめとするGNSS衛星が発する電波を地上で受信している時、受信信号の強度や位相が変動することがある。この現象は、シンチレーションとよばれており、衛星から送信された電波が電離圏中に生じたプラズマ密度の不均一構造を通過する時に発生する。従って、シンチレーションを観測することにより、電離圏プラズマの粗密構造の有無をモニターすることができる。我々は、このシンチレーション現象を観測するため、JAVAD社製GNSS受信機G3-Tを3台購入し、そのうちの1台を平成24年1月に、残りの2台を9月にノルウェーのEISCATトロムソ・レーダーサイトに設置し、3台での連続観測を開始した。現在も順調に観測を継続している。3台の受信機のアンテナ間の距離はそれぞれ172m、218m、242mであり、受信信号強度及び位相の受信機間の差から、シンチレーションの原因となる電離圏擾乱のドリフト速度を計算することができる。2012年9月13日に得られたデータからS4及びTECの標準偏差を導出し、その結果から以下の観測結果が得られた。 1)00:00-00:30UTと01:30-02:30UTにS4指数の増大が観測されたが、00:30-01:30UTにTECの変動が見られるが、S4指数の増大は見られなかった。 2)TECが大きく変動した00:18UTは光学観測からオーロラが全天に現れた時刻と一致する。 また、低軌道衛星が送信する150及び400MHzのビーコン電波を受信し、全電子数及び信号強度を取得する装置をGNSS受信機と同様、EISCATトロムソ・レーダーサイトに設置し、シンチレーション発生時の受信電波のスペクトルを取得することに成功した。このデータを解析することにより、極域におけるシンチレーション発生させる電離圏擾乱の空間構造に関する知見が得られると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3台のGNSS受信機をEISCATトロムソ・レーダーサイトに設置し、順調に連続観測を継続している。太陽活動度の上昇に伴い、地磁気活動も活発になり、多くのシンチレーション・イベントの観測に成功している。また、オーロラの全天画像を取得するカメラも順調に稼働しており、多くの同時観測データが得られている。ただ、これら多くの観測事例の解析に時間を要しているのが現状である。
|
今後の研究の推進方策 |
ノルウェーのトロムソEISCATレーダー・サイトに設置した、GNSS受信機及び低軌道衛星から送信されるビーコン電波を受信する装置の観測を継続する。シンチレーションとEISCATやSuperDARN観測データ及び欧州のGPS観測網から得られる全電子数データとの比較を行い、以下の研究項目を実施する。 1.ルビジウム発信器を用いた高精度の基準信号を受信機に入力し、電離圏擾乱による位相シンチレーションの観測を行う。3台の受信機で観測された位相変動の時間差から電離圏イレギュラリティの伝搬速度を求める。 2.シンチレーション発生場所とオーロラ・カメラによって観測されたオーロラ画像とを比較することにより、オーロラのどのような構造によってシンチレーションが発生しているのかを明らかにする。また、SuperDARNのCUTLASSレーダーによる電離圏イレギュラリティ(FAI)観測データとシンチレーションとの比較を行う。シンチレーションを引き起こす数100m~数 kmスケールのイレギュラリティは、FAI生成に必要なプラズマ密度の勾配を与えることができると考えられる。両者の間に強い相関が見つかれば、FAI生成には数100m~数 kmスケールの電子密度勾配が重要な役割を果たしている証拠となる。 3.GNSS観測によって得られたシンチレーション・ドリフト速度とSuperDARNやEISCATレーダーによって観測される背景電場との比較を行い、どのようなプラズマ不安定によってイレギュラリティが生成されているか、また、イレギュラリティ生成に果たす電場の役割を明らかにする。
|