研究課題/領域番号 |
23405008
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
嶋田 正和 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40178950)
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研究分担者 |
藤井 義晴 東京農工大学, 農学研究科, 教授 (10354101)
徳永 幸彦 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90237074)
津田 みどり 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (20294910)
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キーワード | Callosobruchus属 / Acanthoscelides属 / Sennius属 / 新大陸 / 旧大陸 / 温度依存の生活史進化 / 分子系統解析 |
研究概要 |
嶋田は、特任助教の加藤俊英と共同で、大学院生の坂本亮太(博士3年)をガラパゴス諸島のダーウィン研究所に5か月派遣し、マメゾウムシのDNA採取を試みた。加藤のアドバイスの下に、坂本はガラパゴス諸島及びエクアドル首都キト周辺にてマメゾウムシの採集を行った。ガラパゴス諸島ではマメ科を中心とする植物から8種のマメゾウムシを採集した。また、キト周辺では98サンプルのマメ科を中心とする植物を採集し、そのうち6サンプルよりマメゾウムシを得た。Acanthoscehdes属3種、Sennius属3種、Amblycerus属1種(ガラパゴス諸島固有種)が同定済みであり、さらに残りの標本の同定とDNA抽出を進めている。 藤井は東南アジア(主にマレーシア、ミヤンマー)、中南米(主にペルー)の植物でアレロパシー活性の強いものを探索しいくつかの有望なものを得た。熱帯地域のマメ科にアレロパシー活性の強いものが多くみられた。その中でいくつかの成分を同定した。マメ科の緑肥植物ムクナ(はっしょうまめ)に含まれるアレロケミカルの遺伝子レベルの作用機構をDNAマイクロアレイで調べた。 徳永は特に貯穀害虫のマメゾウムシに注目して調査研究を行った。12月にマカオに採集に行ったが、採集できたのはCallosobruchus maculatusのみであった。また、Callosobruchus属のマイナー種(C.subinnotatusやC.rhodesianus)に注目し、他のCallosobruchus属との交配可能性について検討を行った。現時点ではこれら2種と他のCallosobruchus属との雑種形成は認められない。津田は、徳永・津田が得た標本を用いて、広域分布するヨツモンマメゾウムシの遺伝的分化について、地理的隔離と寄主植物の効果を定量評価した。mtDNAの3遺伝子に基づいた系統樹は、地理的分布と良く一致し、寄主植物との一致は弱かった。遺伝距離は、アジア3地域とアフリカ2地域の間で有意だった。Vigna属2種間でも有意だったが、地域間で偏在するため、寄主は単独の分化要因とは言えない。マダガスカルと中国等、異なる地域間で同一のハプロタイプを共有する集団があり、人為的な移動と考えられた。本種とササゲの分化は推定年代が一致し、同じ気候・地史要因によって分布が拡大・隔離したと推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GC・MSやLC-MSを用いた毒性物質の同定は、藤井との共同で化学分析する人員が別の業務に異動したために十分には捗らなかった面はあるが、一方で、新大陸の固有種であるガラパゴス諸島でのマメゾウムシのDNAを採取することができたのは収穫である。また、嶋田と津田は共同研究者の今藤夏子と一緒に旧大陸アジア大陸に分布しているマメゾウムシの系統樹と細胞内共生細菌であるWolbachiaの感染分布を解析した論文を発表したのは新たな成果である。また、津田はマメ科との系統対応で、気候に依存した温度適応と生活史の変化をもとに、マメゾウムシ亜科の気候から見た生活史進化を説明した論文を発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
新大陸のマメゾウムシ亜科の分子系統樹の基底部(琥珀から見つかった古代種の化石から年代推定)と、途中の系統結合部の固有種がガラパゴス諸島の各島の火山履歴による年代推定とで、大まかに分岐の絶対年代推定ができる可能性がでてきた。
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