研究課題/領域番号 |
23500704
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
志々田 文明 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80196378)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 嘉納治五郎 / 柔道 / 離隔態勢 / 当身技 / 武術 |
研究概要 |
23年度は7月に体育学会体育哲学専門分科会箱根合宿研究会において(1)研究報告「近代柔術の理論と展開:嘉納治五郎の「武術としての柔道」の思想」を行った。また9月の日本体育学会大会においてその後の研究で補足した同名の(2)研究報告を行った。さらに2012年3月のスポーツ人類学会大会において(3)研究報告「嘉納治五郎の柔道理論と富木謙治の展開」を行った。 (1)では近年柔道のあり方について問題視するような状況が生まれていることを踏まえて、体育法として嘉納が設定した乱取り競技の領域の背景基盤にある柔道構想に焦点を当て、特に嘉納から南郷次郎第二代講道館長への継承と、その下で行われた「離隔態勢の技の研究委員会」について明らかにした。 (2)では嘉納が柔道の在り様に問題を抱き満足することなく死去していることを踏まえて、嘉納の課題は、当身技に対処する「離隔態勢の技法」(当て技をどのように捌いて「倒す・抑える」か)はどのように理論化されているかという点であったことに言及し、柔道関係の雑誌等をベースに物語を含む文献から柔術・柔道における技法を考察した。結果、A.当身を含んだ柔道の理論化は嘉納の生前にはなされなかった、B.当身を想定した講道館の稽古法は体捌きをよくし自然発生的に足技を生んだのではないかとの知見を得た。 (3)では嘉納は、明治35(1902)年に科学的思想(具体から原理への帰納的思考と原理から具体を考える演繹的思考)の武術への展開の必要を語っている。では嘉納は「原理」をどのように展開しようとしたのかという問題意識から、 (1)嘉納の武術における自然科学的思考法の具体的展開を検討しそれらの達成と限界を検討した。一方、(2)嘉納のこの文脈での研究を展開した柔道の実践的研究者富木謙治はその研究で、何を、何故、どのように展開し、その基本は何で、どのような達成と限界を持っているのかについて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度の研究は当初設定した本年度の研究目的(1)「当身技に対処する観点から見た、草創期の講道館柔道に見られる武術としての柔道と柔道の形(特に古式の形など)及び天神真楊流の形との関係」と、(4)「富木の「柔道に於ける離隔体勢の技」理論(1942)とその後の発展の問題点」に前進が見られた。ただ(1)については柔道の形の具体的な分析に入る前の基礎的研究(柔道揺籃期の柔道技法研究)に止まった。(4)については、その後の展開としての徒手乱取りの研究(平成25年度計画)に入っているが、研究報告にまとめるには至らなかった。 研究目的(2)「植芝盛平の大東流合気柔術のどの点に嘉納の求める武術性があったのか」については、担当する研究協力者の就職活動などもあり研究報告にまとめるには至らなかった。(3)「唐手(空手)と精力善用国民体育との関係解明と、唐手と柔術及び武術としての柔道(それは当然離隔体勢の技法となる)との関係」についても、連携研究者の勤務先変更に伴う環境の変化により、研究報告にまとめるには至らなかった。(ただし連携研究者は共著で関連した一本の論文を発表している。) 加えて東日本大震災の影響で研究全般が遅れることとなり、当初予定していた海外での研究発表計画も中止に追い込まれた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、6月に開催予定のIMACSSS(国際武術・格闘技科学学会)のジェノバ(イタリア)大会において、研究代表者は、"Judo principle" and "Kendo principle": Jigoro Kano’s ideas and Kenji Tomiki’s theoretical development を報告する。ここでは本研究目的(4)の課題である、嘉納治五郎の武術としての柔道思想が何で、どのように展開・継承されたのかが論じられる。この報告は論文としてまとめられる予定である。またジェノバの学会では、研究協力者によって研究目的(1)に関連した当身技と活法についての研究発表が予定されている。 研究目的(2)と(3)に関する研究計画については、日本武道学会及び日本体育学会等において研究報告を行なう計画である。6月に計画されている打合せにおいて詳細に検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、6月開催のジェノバにおける国際学会の旅費として、研究代表者と研究協力者の支出(56万円)と、英文論文校閲料(8万円)が支出計画されている。 国内では体育学会または武道学会における研究発表旅費(一名10万円)が支出計画されている。 直接的な研究活動以外では、専用ウェブサイト運営・更新(年間4万円)が計画されている。 25年度の直接経費は1,100,000円、26年度の直接経費は800,000円である。それぞれ国際学会、国内学会での旅費関連が支出計画されている。
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