研究課題/領域番号 |
23500704
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
志々田 文明 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80196378)
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キーワード | 該当しない |
研究概要 |
志々田はIMACSSS会議(2012.6.8-10. 於イタリア・ジェノバ)で「“Judo principle” and “Kendo principle”: Jigoro Kano’s ideas and Kenji Tomiki’s theoretical development」について研究発表を行い、柔道原理と剣道原理の関係における嘉納から富木への理論的展開について解明した。また湯浅(研究協力者)は、同会議で「The Atemi in the jujutsu for medical applications: Focusing on Tenjin-shinyo-ryu」について研究発表を行った。次いで志々田は、日本体育学会第63回大会(2012.8.22. 於東海大学)において、「『柔道と剣道の合体』の術理―-嘉納治五郎の言説の意味」について研究発表を行い、嘉納の柔道と剣道の合体する構想を実現させる重要な契機を含んでいることを明らかにした。また湯浅は、同大会において「江戸時代における接骨の諸相と天神真楊流柔術との関係」について研究発表を行った。 志々田は、スポーツ社会学会第22回大会研究発表(2013.3.18-19.於福山大学) において、「嘉納治五郎は柔道の何を「発明」しなかったのか?」について研究発表した。古式の形の打砕を分析し、当身技の柔術的表現と解釈される点があることを解明した。 志々田執筆の以下の論文は国際学術誌 Archives of Budoに掲載された。 Shishida, F. (2012) A Judo that Incorporates Kendo: Jigoro Kano’s Ideas and Their Theoretical Development, Archives of Budo, Vol.8(4): 225-233.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初設定した研究目的(1)「当身技に対処する観点から見た、草創期の講道館柔道に見られる武術としての柔道と柔道の形(特に古式の形など)及び天神真楊流の形との関係」について。まず、Shishida, F. (2012)によって、当身技と古式の形の虚倒と水流の技法との関係を明らかにすることができた。また、スポーツ社会学会第22回大会研究発表では、さらに打砕についても考察を深めた。次に、「武術としての柔道」と天神真楊流の形との関係については、天神真楊流の当身に関するこれまでの基礎的研究が十分でないところから、平成24年度は活法についての研究進展を見た。 研究目的(2)「植芝盛平の大東流合気柔術のどの点に嘉納の求める武術性があったのか」については、主に担当する研究協力者の勤務先の状況もあり、具体的な成果に結びついていない。 研究目的(3)「唐手(空手)と精力善用国民体育との関係解明と、唐手と柔術及び武術としての柔道(それは当然離隔体勢の技法となる)との関係」については、連携研究者の勤務先の状況から具体的な成果に結びつかなかったが、後者については研究の進展が見られ、25年度の研究成果が期待される。 研究目的(4)「富木の「柔道に於ける離隔体勢の技」理論(1942)とその後の発展の問題点」についての本格的な研究には残念ながらまだ着手できないでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は多くの研究発表を行ってきたが、論文化する時間が十分にとれなかった。平成25年度は論文を発表以上に論文執筆に時間をかけて、より多くの論文を生産したい。 研究目的(1)については、9月開催予定の日本武道学会第46回大会(第一回国際武道会議。於筑波大学)において柔道の形の「五つの形」と嘉納治五郎の柔術の形について研究発表を行う予定である。 研究目的(2)については、柔道の改善に合気柔術の必要性を説いた嘉納の意味を考えるために、植芝の戦前の技法を当時の史料(『乾・坤』)の分析から考え、論文を執筆する。 研究目的(3)についてが、「精力善用国民体育に現れた唐手がどういう種類(流派)の唐手なのか、についての史的・術理的研究」及び「その唐手技法は柔術及び柔道の技法とどのような技術的関係を持つか」に関する論文を執筆する。この作業はそのまま、未着手であった23年度、24年度の計画の実行を意味する。 研究目的(4)については最終年度にまわす予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度・平成25年度の直接経費は1,100,000円、平成26年度の直接経費は800,000円である。それぞれ国際学会、国内学会での旅費関連が支出計画されている。しかしながら次年度は、IMACSSS会議が日本武道学会の国際武道学会の中に吸収される形で日本において開催されることになった。また、ISHPESの大会が台湾で行われることであったが、治療薬の見つからない鳥インフルエンザが発生したため、危機回避の観点から個人の判断で学会発表を中止することにしたため、当初次年度に予定していた海外出張の経費がかからないことになった。このため、現段階では、次年度は国際学会経費を国内学会経費等に振り返える予定である。また、国際学会論文の校閲経費、掲載料などに使用するなどで対応する。
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