最終(平成25)年度は、八女市を中心に2012年九州北部豪雨災害跡地の変化の調査、霧島火山山麓の新燃岳降下テフラの堆積後の調査、新聞記事による土砂災害の調査、及び報告書の作成を実施した。 土砂災害発生の経年的変化を定量的に示す方法として、福岡県県土整備課の資料に基づき、土砂災害発生地点をGISで特定し、GISソフトで検索半径10㎞の発生地点密度を5年ごとにまとめて年次別に移動平均する方法を用いて、過去約30年間の土砂災害発生地点密度の変化を明らかにした。その結果、2003年九州豪雨災害は、土砂災害密度が30年間では突出した事象であることを明らかにした。その背景については、社会的な条件を新聞記事で、自然的な条件を降水状況等の面で検討中である。行政資料の調査では、太宰府市関係の議会議事録の調査から年次別の災害復旧地点の分布図などを作成した試みを報告書にまとめた。 最近の土砂災害実態調査では、平成24年度に生じた2012年度九州北部豪雨災害を中心に昨年度から継続的に調査を行った。この災害は土砂災害も多発してはいるが、時間雨量100㎜前後の異常な降水が数時間以上継続した点でやや特異な降水で、これに伴う洪水被害の方が大きく、土砂災害は河川沿岸の崩壊や地すべり性崩壊が顕著に出現した。被害範囲が広域にわたるり、現状でも全貌の調査は完了しないが、この科研費等の調査で、激甚な被害地区を調査できた。 平成23(2011)年1~2月を中心に噴火した霧島新燃岳の降下テフラ層調査は、山地斜面に堆積した降下火山灰層の変化を観察してきた。噴火当初心配された土砂災害は比較的少なく、流失した火山灰の下方移動過程について簡易なレーザー測量でも緻密に経年変化を追うことができ、報告書に示した。このほか長崎市災害30年後の斜面の現地調査を行い、画像解析にはコンポジット画像の手法を試行的に行いつつある。
|