研究課題/領域番号 |
23501290
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
秋山 暢丈 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00338865)
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研究分担者 |
斎藤 三郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (10186934)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞免疫 / 抗原提示 / 糖鎖 |
研究概要 |
癌細胞に代表される非極性細胞において、既知のクラスIエピトープ、シグナル配列、N型糖鎖修飾配列、及びクラスIエピトープを含む発現ベクターを種々の細胞にトランスフェクトし、その非調節性に分泌される糖鎖タンパク質を上清から回収し、精製を行った。 同時に細胞内に残留した糖鎖タンパク質を2種類のタグを活用して、精製した。 精製した細胞内タンパク質を更にトリプシンで分解し、ほとんどタンパク質成分を含まない所まで消化し、ヒスチジンタグを利用して、精製し、CNBr活性化セファロースに固定した。 細胞内に残留したトリプシン消化前のN型糖鎖付加タンパク質をウサギ及びげっ歯類に免疫し、ELISA法によりその抗体価を測定し、抗血清が誘導されている事を確認した。現在、細胞内の糖鎖構造に選択的なポリクローナル抗体の精製の条件を検討しているところである。また、前述のベクターを細胞にトランスフェクトし、その後、特にα-グリコシダーゼに選択的な種々の阻害剤を作用させ、不完全な糖鎖を細胞に発現させ、細胞質に取り残す様に試みた。その結果、本来放出されない糖鎖構造で細胞外に放出されたタンパク質の精製品を得た。別のアプローチとして、樹状細胞もしくはマクロファージに抗原を選択的にターゲティングする為、マンノースの連結構造を模倣するペプチドをOVAタンパク質に結合したモデルタンパク質を得た。 同様に選択的ターゲティングに関与していると考えられる機能分子を精製を完了し、これらに結合するペプチドのスクリーニングを開始した。これらのモデルタンパク質を用いて、それらのCTL誘導活性を評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖鎖選択的抗体の作成について、免疫源として必要となる細胞内に残留した糖鎖構造を持つタンパク質の作成は既に完了した。また、これらの抗原を接種したウサギ及びマウスの抗体価の上昇は既に確認している。 予想されたことであるが、得られた抗血清は細胞内に残留したタンパク質と放出されたタンパク質を両者とも認識している。 これらの抗血清から、細胞内に残る糖鎖構造に選択的な抗体を生成するため、抗原カラムの作成も終了しているが、これらの抗原カラムを用いた不要なエピトープを持つ抗体の除去法の確立が出来ておらず、目的とする抗体が取れていない。 これらの問題を解決するため、タンパク質部分の変更を含めた抗原の作成、モノクローナル抗体の作成等の対処で解決する。モデルタンパク質発現細胞の作成に関しては、特に問題なく作成が行えた。 意外な結果であったが、糖鎖修飾阻害剤はタンパク質放出を阻害しなかった。 しかし、細胞外に放出されたため、却って簡便に精製を行う事が出来た。 得られたモデルタンパク質の糖鎖構造の確認と、OVAエピトープを指標にしたこれらの抗原タンパク質のCTL誘導活性の評価が遅れており、早期にまとめる必要を感じている。 これらの解析結果を待たないと、不完全な糖鎖構造を持つタンパク質を発現する細胞の構築が行えないため、早急に改善する必要がある。ステーブルに発現する細胞の樹立は、平成24年度の予定であるワクチン作成により回避する事も可能なため、これらの観点からのアプローチも取る必要がある。また、糖鎖構造を模倣する手法が出来たため、これらの系の評価も急ぐ必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度で遅れている研究課題については、急いで行うこととするが、当初の計画どおり、特に変更すること無く、推進するものとする。 残金30,286円は計画的に使用していたうえでの端数であり、来年度の研究経費の一部として使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に糖鎖構造の違いによる CTL 誘導活性の違いの評価を目指すものとする。現在、MHC クラスIエピトープに関連したワクチンの作成法が報告されている。 特にカチオン性のリポソームを用いたワクチンは CTL の誘導に有効である。 この免疫法を用いて、先に精製した細胞内に残された糖鎖構造のモデル蛋白質と細胞外に放出されたモデル蛋白質を C57/BL6に免疫し、CTL の誘導活性を比較する。 さらに CTL の誘導を強化する条件を TLR,PRR 等のリガンドを含めリポソームに加え、ワクチンの最適化を行う。 遺伝子工学的にシグナル配列、タグ、糖鎖修飾サイト及びペプチダーゼサイトのみを発現させるベクターを作成し、哺乳細胞にトランスフェクトし、細胞内に蓄積する糖鎖のみを精製する。この糖鎖をリポソームワクチンに添加した際の CTL 誘導へのアジュバント効果を定量する。 また、先に作成した糖鎖修飾サイトを含まないレポーターは細胞外への放出が行われない事は既に確認出来ているが、このレポーターを発現した細胞の免疫によって、OVA 選択的 CTL の誘導に関しての評価も行うものとする。
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