研究課題/領域番号 |
23510047
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
速水 祐一 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 准教授 (00335887)
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研究分担者 |
五十嵐 勉 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (30202857)
樫澤 秀木 佐賀大学, 経済学部, 教授 (60214293)
佐藤 慎一 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (70332525)
李 オンチョル 佐賀大学, 農学部, 講師 (10568364)
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キーワード | 国際研究者交流 / 韓国 / 干潟 / 干拓 / 開門 / 環境影響評価 / 比較研究 / 公開シンポジウム |
研究概要 |
日本では,平成25年12月から諫早湾の中長期開門調査が実施される予定である.干潟域の大規模複式干拓で作られた淡水湖への海水再導入は,国内で初めてのケースである.一方,韓国では既に先例がある.本研究は,このような状況下,類似した環境で既に大規模複式干拓と調整池の開門が実施された韓国の例に学ぶことを目的とする. この目的に対して,平成24年度は韓国で韓日国際シンポジウムをおこなった.また,主に社会科学的側面から検討することを目的としたワークショップを行った. シンポジウムは,「Korea-Japan Joint Symposium 2012 -Effects of large scale reclamation and damming in the estuaries based on the case studies in Korea and Japan」と題して,8月28日に仁荷大学(仁川市)で一般公開シンポジウムとして開催した.日本側から2題,韓国側から2題の発表が行われた.特に,韓国の仁荷大学の洪在上教授から発表された,1年前に始まったばかりの潮力発電所の稼働以降の始華湖の生態系の変化についての報告は,非常に興味深いものであった. ワークショップは,2012 Korea-Japan International Workshop –Reclamation and coastal environment-と題し,8月26日に江原大学(春川市)で,専門の研究者だけで行った.日本から2名,韓国から3名の研究者が話題提供し,昨年に続き,予定をオーバーして非常に活発な議論をすることができ,得られたものは大きかった.ワークショップの内容にもとづいて4本の論文が執筆され,江原大学が発行の学術雑誌,「Environmental Law and Policy」に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,日本側研究者が訪韓し,韓国で韓日公開シンポジウムを開催した.また,研究者だけで深い議論を行うワークショップを開催した.さらに,セマングム,シファの現地視察と調査(サンプリング,聞き取り,資料収集)を行うことができた.現地視察については,韓国Rural Research Institute of KRCから,研究代表者の速水に対して,国際ワークショップのための招待があり,それに合わせて現地視察をすることができたため,本科研費の予算を使うことなく実施することが出来た. 五十嵐・李・佐藤は,韓国側カンターパートと共に,始華湖・スンチョン湾などの調査を実施するとともに,現地での聞き取り調査を行った.樫沢は,国際ワークショップを通して,干拓をめぐる日韓の法制度やリスクコミュニケーションの比較検討を進めることができた. 研究プロジェクトの2年目である本年度は,研究成果の公表も進み,論文だけで5報が,本研究に関連して発表された.さらに複数のテーマについて,最終年度である平成25年度中に論文としてまとめて公表すべく作業が進められている. こうしたことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本科研費申請当初は,平成25年度は日本国内での作業と報告書とりまとめだけを予定していたが,平成24年度の予算を節約することができたため,平成25年度に第3回の日韓国際シンポジウム・ワークショップを日本で開催する.シンポジウムのプロシーディングスは印刷&インターネットで広く発信する.平成25年12月には諫早湾潮受堤排水門の中長期開門調査が開始される予定となっており,その前に本研究で公開シンポジウムを行って韓国の先例について国内で詳しく紹介することは,開門調査に関する研究者・市民の理解を深めると共に,開門の効果を評価し,市民・行政担当者に理解していただくために,より適した調査方法を検討することにも役立つであろう.その上で,3年間の研究成果を取りまとめて報告書を作成すると共に,この3年の共同研究をベースにして,新たな国際共同研究への展開を検討する.また,各メンバーで,これまでの調査結果を元にして学術論文の執筆・投稿を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,日本で国際シンポジウム・ワークショップを開催する.そのために,韓国から研究者を招聘するための旅費,謝金を必要とする.また,シンポジウム開催のためのプロシーディングス等の印刷費,アルバイト人件費,日韓翻訳費用等が必要となる.シンポジウムの前に,事前調整および資料収集のために日本側研究者が訪韓するが,そのための研究代表者・分担者の旅費が必要となる.また,東北大の佐藤が佐賀・有明海へ行くための旅費が発生する.
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