研究課題/領域番号 |
23510047
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
速水 祐一 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 准教授 (00335887)
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研究分担者 |
五十嵐 勉 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (30202857)
樫澤 秀木 佐賀大学, 経済学部, 教授 (60214293)
佐藤 慎一 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70332525)
李 オンチョル 佐賀大学, 農学部, 講師 (10568364)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 干潟 / 複式干拓 / 日本 / 韓国 / 有明海 / 開門 |
研究実績の概要 |
本研究では、干潟域における大規模複式干拓が引き起こす問題について日韓の比較を通して共通点・相違点を明らかにすることを試みた。そのために、日本の有明海・諌早湾の事例と、韓国の始華湖、セマングム干拓、スンチョン湾を比較した。4つの水域はいずれも大規模複式干拓が社会問題を引き起こしたが、干拓が終了して淡水湖ができており、開門の実施について現在意見が分かれている諌早湾、淡水湖化後、再び海水導入をおこなった始華湖、潮受堤は完成したが締切はまだであるセマングム湖、干拓を阻止したスンチョン湾という違いがある。ただし、諌早湾では短期開門による海水導入が2002年におこなわれた。本年はこれまでにおこなった研究のとりまとめを実施し、3月には佐賀で研究会を実施した。淡水湖化した調整池に海水導入をおこなった場合、マクロベントスとしてはヌマコタキガイ・ドロクダムシといったオポチュニストが最初に急増するという特徴が見られた。したがって、現在問題になっている諌早湾の中長期開門でも、同じような影響が生じると予測される。一方で、潮流に関しては、開門しても有明海奥部ではほとんど変化はないと予測された。諫早締切、開門の影響よりも、むしろ月昇交点変動による自然要因の18.6年周期変動の方が、有明海奥部における潮流の変化としては大きいと予測される。諌早湾の場合、開門という方向が一度決まりながら、現在膠着状態に陥っている。これは本来司法は2者間の紛争処理にフィットしたものであり、漁民・農民・国という3者からなる問題の解決には限界があることを示す。一方で、高裁判決後、国に「自主的に」開門を進めようとする意思が欠けていた、そのために問題の膠着化を招いたと考えられる。スンチョン湾では、大規模複式干拓が中止したが、その代わりに干潟域の自然環境を生かした地域振興がなされており、干潟域のワイズ・ユースのモデルケースとなっている。
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