研究課題
我々が開発した大脳皮質に病変を惹起し得る、胎児性水俣病モデル・ラットを用いて、発達期の大脳に細胞死を引き起こす比較的高用量のメチル水銀(MeHg)毒性に対する食物由来Se化合物で比較的毒性の低いセレノメチオニン(SeMet)の抑制効果とそのメカニズムの検討を行った。大脳皮質においてMeHg群では神経変性、反応性アストロサイトの増殖及びグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)活性低下が起こったが混合曝露群では抑制されていた。Seの中枢でのMeHg毒性発現に対する抑制効果が初めて直接的に観察された。太地町住民における血中水銀濃度は男が女より約2倍高かった。一方、セレン濃度は男女でほぼ同じであったが、血中水銀濃度とセレン濃度は男女ともに正の相関を示した。4種の歯クジラ類で、総水銀濃度が高くなるとメチル水銀含量も増加したが、メチル水銀はある一定の濃度で増加が停止して保たれる傾向が見られた。また、いずれの歯クジラ類でも総水銀濃度が高くなるにつれて急激にセレンと無機水銀のモル比が低下し、1:1に近づき一定となった。EPMA分析では水銀とセレンが筋細胞内の筋細胞膜近接部に、ほぼ同じ場所に粒状に点在することが確認された。以上から、歯クジラ類は、比較的高濃度の水銀を体内に蓄積するが、無機化能力が高く、非活性で無毒なセレン化水銀に変化し筋細胞内に残留していることが示唆された。細川猫の脳、肝、腎臓への水銀の蓄積ではセレンの増加を伴っていなかった。そこで、水俣病はセレンの増加を伴わない、メチル水銀の突出した汚染で引き起こされた中毒であろうことが確認された。また、水俣湾埋め立て地に眠る高濃度水銀ヘドロに含有される水銀はその殆どが、容易には水や海水に溶出する可能性の低い、硫化物と結合した水銀と考えられる予備実験結果が得られた。
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