研究課題/領域番号 |
23510197
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
福田 恵美子 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 講師 (50546059)
|
研究分担者 |
武藤 滋夫 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (50126330)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 投票ゲーム / 投票力指数 / 二院制 / 代議員制度 / 合成投票ゲーム |
研究概要 |
各国で用いられている二院制について調査を実施し,合成投票ゲーム,具体的には協力ゲームのミート (meet), ジョイン (join) の組み合わせで表現できることを確認した。日本で用いられている二院制を,再審議にかかわるパラメータαを用いた二院制ゲームとして定義し,ミートやジョインを用いた合成での表現もおこない,以下の結果を得た。(1) 二院制ゲームにおいて,代表的投票力指数がパラメータαの加重和で表せる。これにより詳細な事例研究が容易となる。(2) 提携構造を考慮した場合については,提携構造を考慮したシャープレイ・シュービック指数(CS値)がDubeyの公理を満たす唯一の投票力指数となることを示した。(3) CS値を利得とした提携形成ゲームを用いて,近年の国会議席に対応して,現行の連立与党の安定性を分析した。(4) 安定となりうる連立与党を計算した。ただし,より詳細な分析は24年度に継続しておこなう。(5) 交渉集合については,実際の国会の議席を用いて,1~2件の事例における交渉集合を計算した。より一般的な特性については継続して分析中である。代議員制度のモデルについては,二大政党制を仮定した既存の代議員制モデルを三大政党,四大政党の場合に拡張を試みた。しかし,既存モデルの拡張では,既存モデルにおいて観察される問題点がそのまま残ることがわかった。したがって,Bolgerらの多選択肢投票ゲームとその指数を応用して一票の重みを評価することを,今後引き続き実施していくことになった。実験計画については,有効な代議員制のモデルの確立にいたらなかったため,具体的な計画は24年度以降の課題として残った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画については当初の計画よりやや遅れているが,二院制ゲームの定式化および事例研究の進捗が順調であるため,全体としておおむね順調に進展していると考えられる。ミートとジョインで合成される投票ゲームと,二院制議会をモデル化した二院制ゲームとの関係が示され,CS値がDubeyの公理をみたす唯一の提携構造を考慮した投票力指数であることがわかったため,CS値による事例研究の有用性が高まったと言える。事例研究についてはおおむね順調に進み,23年度にもその成果を研究発表会で発表している。代議員制度については,既存モデルの自然な拡張では問題点も残ることが明らかになったため,新たなアプローチが必要となる。一方,特定のクラスの投票ゲームにおける,重み(議席数)と影響力(投票力指数)の関係を調べて日本の国会の特徴を捉える分析も進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
二院制ゲームとその投票力指数を用いた事例研究については,コンピュータでの計算を含めて詳細に実施し,研究論文にまとめる。この過程において,平成24年度には国内外での研究発表をおこない,投票ゲームとその応用研究に取り組んでいる他研究者との意見交換を通してモデルやアプローチの改良を実施していく。特に,平成24年度9月に開催される投票モデルのワークショップに参加し,欧州で盛んにおこなわれている投票モデルについての最新の研究について学び,今後の研究に役立てていく。特に,欧州において連立政権に対する関心が高まっている現在,ヨーロッパ,日本のいずれにも応用できる連立与党の影響力の指標,安定性の指標について,有意義な研究交流が期待できる。また,連立が必要な状況と,そうした状況下での力関係を,特定のクラスの投票ゲームにおける,重み(議席数)と影響力(投票力指数)の関係から特徴づけるアプローチを新たに取り入れていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度分に残額が生じた理由としては,東日本大震災の影響等から国内外への出張をともなう研究交流,研究打ち合わせを予定より控えたことがあげられる。また,実験室実験の計画や実施が他の研究項目より遅れていることも,人件費支出を抑え,残額が生じる要因となっていた。今後の研究の推進方法にも記した通り,平成24年度には,近年,政界再編や連立政権への関心が高まっている欧州の研究者との研究交流ができるよう,国際会議,ならびに国際的勉強会への参加を予定している。このような成果発表,およびディスカッションのため,旅費として研究費を使用していく。また,予備実験を含めた実験費用としての使用も計画している。
|