研究課題/領域番号 |
23510197
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
福田 恵美子 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 講師 (50546059)
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研究分担者 |
武藤 滋夫 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (50126330)
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キーワード | 投票ゲーム / 投票力指数 / 二院制 / エイペックス・ゲーム / 代議員制度 |
研究概要 |
前年度までに,二院制議会を協力ゲームのミート(meet)およびジョイン(join)を用いて合成投票ゲームとして表記できることから,投票力指数のひとつである提携構造を考慮したシャープレイ・シュービック指数(CS値)の公理系からの特徴付け,いくつかの事例における投票力指数の計算と事例研究,および簡単なケースにおける交渉集合の計算を実施している。本年度はそれを踏まえて,主に以下の二点について研究を発展させた。 (1) 特徴的な場合におけるCS値を計算・比較することで,それぞれの状況において与党,あるいは野党にとって望ましい連立政権の構造を明らかにした。具体的には,一院制議会に対して対称ゲーム,ビッグボスゲーム,エイペックスゲーム等の特殊なゲームの特性を考えるように,二院制議会に対して,(a) 一党のみが両院で多くの議席数を保有する場合,および (b) 上院ではA党が多くの議席数を保有し下院ではB党が第一党であるような,ねじれ国会に準ずる場合について分析した。 (2) 数値計算プログラムに改良を施し,6党のプレイヤーをもつ戦略形提携形成ゲームにおいて,どのような連立状況が安定となるかを計算可能にした。これを用いて,1993年衆院選後,2007年参院選後,2009年衆院選後,2011 年12月の4つの期間を対象に詳細な事例研究を実施した。 (1), (2)の結果については,国内外の研究発表会で成果報告を実施した。 さらに,日本の国会の議席変遷に鑑みて,エイペックス・ゲームに対して中規模政党を導入し変形した準エイペックス・ゲームを定義し,中規模政党の影響力を測る研究を実施している。 代議員制度については,これまでは一票の格差に焦点を当てていたが,国外のいくつかの研究に倣い,選挙区間格差の評価を検討する方向性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた被験者実験については計画より遅れが出ている一方,二院制ゲームの研究に加えて,新たに2つの方向(下記 (2), (3))に研究が拡張した点に鑑み,全体としておおむね順調に進行していると考える。 (1) 二院制ゲームでの達成度については,研究実績の概要に述べたように,特殊な状況における理論結果が得られ,前年度より大規模な事例研究を実施できた。 (2) さらに新しく,エイペックス・ゲームに対して中規模政党を導入し,注目するパラメータに応じて3種類の準エイペックス・ゲームを定義した。これにより,中規模政党の影響力を測る研究を進め以下の結果を得た。中規模政党が他政党やその党員を吸収する状況においては,中規模政党と与党の議席数が僅差にある場合,他の弱小野党を吸収して与党に対抗するよりも与党と協力する方が最適となることなどが示せた。また,この連立与党は構成党数が少数であるほど,自身の発言力を高められるため,投票力指数も大きくなり与党にとってより望ましい提携構造になっていることが示された。 (3) 代議員制度については,国外の研究に倣い,選挙区間格差の評価を検討する方法を模索しており,事例研究用のデータ整理を進展させた。
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今後の研究の推進方策 |
二院制ゲームにおける理論結果について,研究論文にまとめていく。また,事例研究に関しても,前年度までの結果が大きく拡張されたので,改めて研究論文にまとめる。 準エイペックス・ゲームについても現段階で得られている結果を研究発表するとともに,より詳細な理論研究を進めて研究論文としてまとめる。 代議員制度における選挙区間格差の評価については,平成24年度に開催された投票モデルのワークショップに参加することで新たに修得した研究手法である。今後もワークショップ参加者との交流を通じて,よりよい評価指標を検討するとともに,日本の選挙制度に根ざした考察ができるよう,随時事例研究を進めて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については,学術会議参加および研究発表,ワークショップ参加のための旅費等は使用した一方,研究機関の計算設備を使用できたために備品の新規購入が出費として押さえられた結果,残額が生じたと考えられる。 また,大規模な実験計画については他の研究項目より進捗が遅れていることから,人件費が,事例研究のデータ整理のための使用に留まったことも一因と考えられる。 これからは,国内外での研究成果報告のための旅費の他,事例研究のためのデータ整理のための使役費,および実験費用として研究費を使用していく。
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