研究課題/領域番号 |
23510303
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邉 浩平 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (50333638)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中国 / 文化産業 / メディア / 市場経済 |
研究概要 |
平成23年度は初年度にあたるため、まず、書籍及び文献を整理し、中国メディアの市場化に関する先行研究レビューを行った。さらに平成23年度6月に訪中をし、社会科学院新聞研究所、清華大学新聞学院、北京大学新聞学院などメディア研究機関を訪問、メディアの市場化について中国の研究者から聞き取り調査を実施した。あわせて、日本の産業界の意向を調査するために、日本貿易振興機構北京事務所のコンテンツ産業の担当者、日系企業のコンテンツ関連の企業にインタビューを行った。また、中国におけるメディアの民間セクターを調査するために、テレビ制作会社を訪問し聞き取り調査を実施した。 メディア産業の上位概念である文化産業については、近年、積極的な振興策がとられている。2009年に文化産業のグランドデザインを規定した「文化産業振興規画」が公布され、アニメなどのサブカルチャーの分野で産業育成策がすすめられ、外資との合作も進んでいる。国内においても、出版業やネットビジネスなどで、民間セクターが力を強めていることが明らかになった。反面、メディアのイデオロギーに関わる領域においては、2011年7月に発生した温州高速列車事故の事例に代表されるようにネット世論の影響力拡大に腐心した当局が統制を強めており、IT企業に強い自主規制を求めている実態が明らかになった。 中国は、近年ソフトパワーを強化しており、文化産業強化は喫緊の課題であると言える。2011年の秋に開催された中国共産党第17期中央委員会第六回総会(六中全会)でも、文化体制改革の強化が確認されている。 本研究は、中国の世界的影響力拡大を文化という領域から分析する試みであるがその重要性は、昨秋以来さらに増していると言える。上記の知見をもとに本年度は、文化産業の市場化について詳細な調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年6月~7月の訪中において、メディア研究者に対して聞き取り調査を実施し、さらに、当初予定をしていなかった中国国内のメディアに関わる民間企業関係者にインタビューを行うことができた。また本年度実施を予定しているメディア産業市場化調査の事前調査として、テレビ、アニメ関連の会社を訪問した。文献の整理、また、中国における訪問調査は当初の予定以上に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はメディア産業の市場化についてより詳細な理解を得るために、テレビ制作会社とアニメ制作会社を事例として、定量と定性の調査を行う。具体的には、調査会社を通じて、両者の業界動向を把握し、代表的な会社を各々数社選び訪問調査を行う。同時に、テレビ、新聞、ネットと世論の関係、さらにそれらを統制する中国共産党のイデオロギー管理部門の動向を観察するために、昨年度の「温州高速列車事故」や「広東省烏坎村の住民自治運動」と同様のメディアが影響力を発した事件を取り上げ、事例研究を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度予定していた資料整理のための謝金が発生しなかったため、若干残金があった。それは、今年度の研究費補助費として使用する。次年度予算は総額170万円ほどであるが、まず、書籍及び定期刊行物の予算として約45万円を計上。さらに、調査会社を通じてテレビ制作会社、編集プロダクションの業界動向を調査するための調査費として50万円を予定。さらに、出張費として中国出張を2度35万円。その内訳は、一回が調査の実査の立会、もう1回がメディア民間企業への聞き取り調査である。国内出張として東京出張を2度20万円を計上。さらに研究補助費用として月20万円(休暇を除いて月2万円)を見込んでいる。
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