研究課題/領域番号 |
23520009
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原 塑 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70463891)
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研究分担者 |
内海 朋子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究科, 准教授 (10365041)
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キーワード | 哲学・倫理学 / 神経科学 / 刑法学 |
研究概要 |
本研究の目的は、神経哲学において議論されてきた自然主義的な人格概念を幅広く調査し、その刑法学上の意義を明らかにすることである。平成23年度に行った研究により、心の自然化の影響を特に受けやすい、刑法で問題となる人格の構成要素が感情であることが明らかとなった。そこで、今年度、規範的判断の基礎となる妥当な感情的判断とはいかなるものであるかについて、感情についての神経科学や心理学研究を視野に入れながら、調査した。手掛かりになるのが、ヌスバウムやカハンによって提唱され、展開された<刑法における感情的価値評価理論>である。その成果として、平成25年1月13日に開催された北日本哲学研究会において、「普通の人の良識ある判断:ヌスバウムにおける感情と刑法」という題で、研究発表を行った。また、昨年度に行った研究の成果として、論文「刑法における嫌悪感情の役割と社会脳-リーガル・モラリズムと嫌悪感情」が芋阪直行編『社会脳シリーズ第2巻 社会意識を育む脳』の一章として公刊された。 このような刑法における感情の研究に加えて、自然化された人格概念の研究の一環として、Metzinger, T. 2009. The Ego Tunnel: The Science of the Mind and the Myth of the Self. New York. Basic Books の翻訳を進めている。現在までにこの書籍の約半分の訳出作業を終えた。 また、平成23年度に、井頭昌彦『多元論的自然主義の可能性-哲学と科学の連続性をどうとらえるか』(新曜社)の合評会を開催したが(平成24年1月7日、東北大学)、その時に行われた、コメンテータ(植原亮、佐藤駿、成瀬尚志)と著者、井頭昌彦による討論をまとめた書評特集を、東北大学倫理学研究会編『MORALIA』第19号、2012年に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、神経哲学において議論されてきた自然主義的な人格概念を幅広く調査し、その刑法学的意義を明らかにすることである。現在、刑法において問題となる人格概念のなかで心の自然化の影響を受けやすいものとして、感情に焦点をあてた研究をおこなっている。一昨年、昨年度までで、すでに論文発表1件と研究発表2件をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
Metzinger, T. 2009. The Ego Tunnel: The Science of the Mind and the Myth of the Self. New York. Basic Books の翻訳を今年度中に終了させる。また、感情と法に関する研究を継続し、論文や講演において研究発表をおこなっていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年5月11日に感情心理学会で「刑法と感情―感情に基づく法的判断の健全性―」という題で招待講演をおこなう。また今年度、刑法読書会や科学哲学系学会において研究発表を実施する計画がある。そこで、主に、これらの研究発表や論文執筆に必要となる資料を購入するために予算執行をおこなう計画である。
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