Alain Connes の最初の業績は、III型von Neumann環の射影作用素による分類であるが、それは、超準解析の無限についての考え方に導かれている。物理学の場の量子論に現れる場のオペレーターはIII型von Neumann環である。Connesはこの仕事の後、非可換幾何学を構築し始めるが、III型von Neumann環における射影作用の次元の考え方は、非可換測度空間の次元のとらえ方についての非常に興味深い視点を与えている。このように、作用素代数における解析学の代数学化が新たな次元の理解とともに、新たな空間概念を生み出した。 一方で、GAGA論文は代数多様体上の代数幾何学と複素多様体上の解析幾何学との間の同型性を証明したが、これはGrothendieckによる代数幾何学のスキームによる再構築へとつながっていく。また、ガロア理論は、リーマン面の被覆空間における基本群と深いかかわりあいを持ち、それを介してスキームの概念に基づくGrothendieck流の代数幾何学とつながり、これは数論と深く関係している。 このように、作用素代数に基づく非可換幾何学や、代数幾何学において、数学において代数学と解析学の間の関係性ないし総合的視点が、新たな幾何学的空間を生み出したり、数論研究における大切な道具を生み出したりしている。 哲学者J.Vuilleminは、La Philosophie de l'Algèbreの中で、代数方程式論からどのようにしてガロア群が誕生したか、またガロア群がどのようにして解析学や幾何学に応用されていったかについて哲学的分析を加えつつ、構造分析の方法や操作的存在論について論じている。本研究によってなした作用素代数学や代数幾何学の概念構成は、J.Vuilleminによって始められた哲学的研究を深めていく可能性を持っていると考えられる。
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