研究課題/領域番号 |
23520248
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
川村 正典 (川村 湊) 法政大学, 国際文化学部, 教授 (70224855)
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研究分担者 |
守屋 貴嗣 法政大学, 国際文化学部, 講師 (60597813)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
平成23年度は、ブラジル・サンパウロ、リオデジャネイロ、アルゼンチン・ブエノスアイレスにおいて、日系・韓国系移民文学資料の収集を行った。サンパウロでは、サンパウロ人文科学研究所研究員・松阪健児氏、在伯作家・伊那宏氏、ブラジル日本都道府県人会連合会会長・園田昭憲氏、毎日新聞社外信部記者・朴鐘珠氏、ブラジル韓国人移民史編纂委員會委員長・鄭夏源氏らと情報交換を行った。他にも、韓国語雑誌『熱帯文化』同人で小説家のアン・ギョンジャ氏、創刊同人・Joo Sung Kyun氏ら8名ほどと会合し、韓国語俳句誌『麻』への創作などの話をうかがう。京都外国語大学教授・田所清克氏とも会合を持つことが出来、貴重な資料の収集だけでなく、日本語・韓国語話者による日本語文学・韓国語文学の現状と日系・韓国系社会の現状をうかがう事が出来た。ブエノスアイレスでは、アルゼンチン日本大使館文化科専門員・土井英明氏、『らぷらた報知』編集長・崎原朝一氏、韓国語詩人・Ines mihee JO氏らと情報交換を行い、ブエノスアイレスでの日系、韓国人系移民文学活動の現状についてうかがう。日本語・韓国語話者の減少と、各コミュニティによる文化的取り組みにも触れることが出来た。他にも、ブエノスアイレス大学東洋研究センター長・Karolina Mera教授、Chun Seung Hoon氏らとも会合を持つことができ、その様子がアルゼンチン韓国語新聞『KORNET NEWS』にも掲載された。『拓殖』(アルゼンチン拓殖協同組合)4、5、6号、杉田俊夫『アルゼンチンの歌』、江原武『江原武作品集』、同人文芸誌『巴茶媽媽(パチャママ)』(全10号)、韓国語文芸誌『アンデス文学』といった資料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブラジル、アルゼンチンでの日系・韓国系移民文学の資料をある程度収集することが出来、人的な繋がりも形成することが出来た。特に在伯小説家・伊那宏氏からは、自身が発行している著作集を頂き、実作者の視点から、日本語を表現言語として選択した場合の苦労とその意図した作品的な意義などといった、移民小説家の話をうかがうことが出来たのは貴重な体験であった。ブエノスアイレスでも人的な繋がりを形成出来たことが何よりも大きな収穫である。『らぷらた報知』編集長の崎原氏は俳人でもあり、「俳句」が「haiku」として創作されている現状に限らず、日系移民のコミュニティの歴史的逸話をうかがうことが出来たのは大変貴重であった。韓国系移民文学資料も、研究協力者の金煥基氏の知人が、地元韓国語新聞『KORNET NEWS』に、資料募集の広告を掲載したことで、ほとんど収集することが出来たことはおおいに研究を進展させることになったと思われる。また、我々が現地を訪れたことがきっかけとなり、休刊していた、韓国語文芸同人誌『アンデス文学』が再刊されることになったのは、嬉しい出来事であった。加えて、ブエノスアイレス大学東洋研究センター長・Karolina Mera教授と知り合うことで、平成24年度にはブエノスアイレス大学主催の東アジアシンポジウムへの参加も決定している。この平成23年度の調査旅行の成果として、『異文化』第13号(法政大学国際文化学部紀要)に、「在アルゼンチンコリアン移民文学の形成と展開様相」(金煥基)、「アルゼンチン日本語文学論――『巴茶媽媽』について――」(守屋貴嗣)の2本の論文と、「アルゼンチン韓国系移民文学作品選」(金煥基訳、川村湊・守屋貴嗣補訳)として文学作品を掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、アルゼンチンでのシンポジウム参加に加え、リマを中心に、ペルーの日系・韓国系移民文学について調査を行う。すでにブエノスアイレスとリマ在住の知人と連絡を取り合っており、資料収集の見込みもついている。これまで行ってきたブラジル、アルゼンチンの移民文学との差異に注目することで、ペルーの日系・韓国系移民による文学表象の特徴を明確化することを目標としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
外国旅費(ペルー・リマ、アルゼンチン・ブエノスアイレス、ブラジル・サンパウロ)、8月中に20日間の渡航費・移動費・宿泊費として115万円。現地交通費と資料複写費として5万円。
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