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2011 年度 実施状況報告書

メアリ・ウルストンクラフトにおける国家と女性の進歩の概念の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520278
研究機関東北大学

研究代表者

石幡 直樹  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (30125497)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードウルストンクラフト
研究概要

9月20日から29日にかけてジュネーブ大学において、ウルストンクラフトと進歩の概念に関する資料収集を行った。また、ウルストンクラフトの『北欧からの手紙』(Letters Written during a Short Residence in Sweden, Norway, and Denmark)の翻訳を完成し、法政大学出版局からの出版の準備を進めた。旅程表と旅行地図を口絵に加えることとし、その作成を行った。2012年夏頃の出版予定である。また、公開講座においてロマン主義による近代的自然観が日本に伝播した様相をたどって以下のように論じた。ワーズワスを崇拝しヨーロッパ・アルプスを称賛したラスキンは、明治期の日本で広く読まれ、「日本アルプス」を世界に広めた英国人登山家ウェストンも彼に心酔した。日本のラスキンと呼ばれた志賀重昂に導かれて登山を始めた小島烏水は、ウェストンを訪ねてラスキンを知り共鳴する。英国詩人ワーズワスに大きな影響を受け山岳紀行を多く残した英文学者田部重治は若い頃烏水の愛読者だった。ロマン主義的近代自然観は、これらの著述家・登山家によって、ワーズワスの愛でた湖水地方からラスキンの賛美したヨーロッパ・アルプスを経て日本アルプスへと伝わり、彼らの作品を読む我々にも継承されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度はウルストンクラフト、英国ロマン主義と自然観、環境批評などに関連する図書・資料を購入して考察を加えた。また、スイスへ出張して資料を収集した。資料整理に必要なポータブルパソコンと関連機器を購入した。 また『北欧旅行記』の翻訳を完成、次のような解説を添えた。ウルストンクラフトは「文明とはその進歩の跡をたどったことのない人には、その恩恵が十分に評価されないものだ」と述べ、獣のような自然状態からの文明社会への進歩を人間に不可欠なものと捉えている。だが、社会全体の「進歩」について彼女は、北欧諸国の社会のそれを願う一方で、産業革命以降急速に工業化と近代化が進む社会に対する漠然とした不安も以下のように表明している。「友よ、悟性に加えて精神の発展のためには、都市あるいは孤絶の住まいが最も適しているとの確信を、私はますます深めました。知りたいと願うものが、人間、自然、あるいは自分自身のいずれであろうとも。人と交われば、私たちは自分の偏見を吟味せざるを得ず、それを分析しているうちにいつの間にか偏見をなくすことがよくあります。そして田舎では、自然と親しみ、洗練されていない眼には見えない無数の細かな様相を見ていると、想像力に欠かせない情緒や魂を発展させる疑問が生まれてきます。開墾によって田舎本来の特徴すべてが取り除かれ台無しになっていないときは特にそうです。」ここから、文明や国家などの制度の進歩を標榜する一方で、ルソーに代表される、原始社会の無垢で素朴な特性を長所とも捉えており、彼女の進歩概念には、矛盾する要素が混在すると考えられる。

今後の研究の推進方策

平成24年度以降は、基本的に平成23年度の研究計画・方法を踏襲して、研究をさらに進展させる。ウルストンクラフト、ロマン主義時代思潮などに関連する図書・資料を購入して考察を加える。

次年度の研究費の使用計画

平成23年度と同様に、関連著作や資料の分析と解釈が主な研究方法となる。著作と資料の分析以外にも、国内・国外に資料収集を目的とした出張を計画している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 自然の畏敬―日本とヨーロッパに見る風景の受容―2011

    • 著者名/発表者名
      石幡直樹
    • 雑誌名

      第18回国際文化基礎講座「災害を生きる」講義資料集

      巻: 18 ページ: 46-96

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公開日: 2013-07-10  

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