研究課題/領域番号 |
23520282
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 隆弥 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90196296)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 聖書劇 / 旧約聖書 / Robert Greene / 鑑文学 / 商業演劇興行 / エリザベス朝散文 / Thomas Lodge / ペスト表象 |
研究概要 |
平成23年度では、エリザベス朝における宗教・政治関係の研究書、及びアングリカン・チャーチ体制と演劇文化に関する文献・資料を収集し、あわせて、(1)Robert Greeneに関する研究論文の執筆を行うと共に、(2)Greeneおよびエリザベス朝散文に関する学会発表を2件行った。 (1)では、「聖書劇の可能性――A Looking Glass for London and Englandの場合――」を、Seijo English Monographs No.43 (成城大学大学院文学研究科、2012年3月), pp. 153-68に掲載した。聖史劇の創作上演が困難な時期に、何故本劇の創作が可能であったのかを、David and Bethsabeの分析とも関連させながら検証し、結論として鑑文学というフレームや無敵艦隊来襲時の政治的環境の重要性を指摘した。 (2)では、「prescriptiveからdescriptiveへ:初期近代散文の記述の変遷」を第1回エリザベス朝散文研究会で、「聖書劇における旧約聖書の利用について──A Looking Glass for London and Englandを中心に」を第7回エリザベス朝研究会において発表した。前者では、Thomas LodgeとThomas Dekkerのペスト表象を写実性の観点から分析し、それらの記述に作用した政治や宗教また医学などの規範的な言説の影響力を明らかにした。後者では、「ヨナ書」や「サムエル記」などの旧約聖書がいかに戯曲の創作に取り込まれているのかという観点から、商業演劇興行と政治宗教との折り合いの付けられ方を報告し、この両者の関係が個別対応的なものであったことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、1580年代・90年代のイングランドにおいて、演劇文化が立ち上げられる様相を、国教会の作用を念頭に置きながら実証的に再構成し、記述することであり、取り分け平成23年度の目的は、Robert Greeneの聖書劇A Looking Glass for London and England (1594)を、大学才人とプロテスタント的反演劇主義の観点から考察することであった。この件に関し、研究論文を1編執筆し、また研究発表を1件行うことができた。よって、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は、1580年代・90年代のイングランドにおいて、演劇文化が立ち上げられる様相を、国教会の作用を念頭に置きながら実証的に再構成し、記述することであり、平成24年度の個別の目的は、Christopher Marloweの宗教劇The Tragical History of Doctor Faustusと政治劇The Massacre at Parisを分析対象として、大学才人と近代的懐疑主義思想との関係を考慮に入れながら、Marloweにおける演劇と宗教の接触の様態を明らかにすることである。 また、平成23年度より開始したエリザベス朝散文の分析を継続し、18世紀小説への展開を視野に入れながら、写実性と規範性の関係を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、東日本大震災への対応に追われ、研究費の執行を十分に行うことができなかった。平成24年度では、繰り越した経費をも活用しながら、研究課題を遂行する。各種資料・研究書の収集、それらの利用による研究論文の執筆および研究発表はもとより、これらの事業に加えてロンドンでの現地調査を計画している。
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