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2012 年度 実施状況報告書

近代ロシア文学の成立に見る記号としてのヨーロッパの「風景」

研究課題

研究課題/領域番号 23520370
研究機関東京大学

研究代表者

金澤 美知子  東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60143343)

研究分担者 安西 信一  東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (50232088)
宮田 眞治  東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (70229863)
キーワードロシア / ヨーロッパ / 18世紀 / ロマン主義 / カラムジン / ジュコフスキー / 自然風景 / 絵画
研究概要

本年度は本研究課題における研究分担と昨年度までの研究実施状況と成果を確認し、今後の作業に必要な基本的な文献の調査と収集を行った。文献は書籍として購入不可能なものが多いので、必要に応じて複写等で入手した。なお研究年度全体を通じ、大まかに次のような分担が設定されており、今年度もこれに基づいて作業を進めた。
イギリス文学、文化、風景及び視覚表象関連:安西信一が担当 / ドイツ文学、文化関連:宮田眞治が担当 / フランス文学、文化:金沢美知子と安西信一が担当 /ロシア文学、文化、ロシア文学関連及び作業全体の構成とまとめ:金沢美知子が担当。
金沢は、昨年度に続き、18世紀後半ロシアの文学テクストにおいてヨーロッパの「風景」が果たしている役割、及び「風景」が絵(картина)、場面(сцена)としてテクストに取り込まれる仕組みの基本的傾向を考察した。自然描写がふんだんに取り込まれているカラムジン、V.V.イズマイロフの小説を対象に、「風景」の記述および関連する視覚的な叙述を調査した。さらに、カラムジンの作品に関しては、昨年度の作業の継続として、彼がJ.トムソン『四季』、レッシング『エミリア・ガロッティ』、シラー『運命の戯れ』等、18世紀の西欧の作品を数多く翻訳していることを踏まえて、原典と翻訳との間の差異や描写の傾向などを考察した。
なお、成果の一部は日本18世紀ロシア研究会で発表した。今後発行予定の研究誌にも投稿する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は昨年度の作業の継続として、18世紀末から19世紀初頭のロシア・センチメンタリズムにおいて西欧の風景が果たした役割を考察し、基本的な傾向を把握した。センチメンタリズムの時代の翻訳作品、翻案作品についての情報入手の作業についても一定の成果を上げることができた。しかし、作家の文学活動と作品誕生の背景としての当時の社会事情の調査のために新たな文献が必要となり、本年度の後半で研究計画を変更することになった。文献入手を含む作業が若干遅れ、本年度の残りの作業は来年度に繰り越さざるをえなくなった。

今後の研究の推進方策

平成25年度は前年度の作業を継続、発展させ、特に次の作業を行う。
1.ルソーの著作、『新エロイーズ』、『孤独な散歩者の夢想』における自然描写、および自然観賞の行為の描写がロシア文学に与えた影響を考察する。ルソーが好んで描いたアルプス及びレマン湖周辺の風景の役割についても取り上げる。(金沢)
2.近代ロシア文学の「風景」の源泉となっているピクチャレスクの概念について考察する。ロシアにおけるイギリス美学の受容についても調査する。(安西、金沢 )
3.ロシア前期ロマン派で翻訳者としても大きな役割を果たしたジュコフスキーの作品におけるイギリスロマン主義の影響を調査する。(金沢)
4.近代ロシアの文学における人間と自然の表象の源泉となっていたゲーテの作品に注目する。作品に登場する人名、地名や諸モチーフがどのような経緯でロシア文学の中に持ちこまれ、どのように変容したかを考察する。(宮田、金沢)
平成25年度は本研究の最終年度として、作業を総括し、成果を纏める。具体的には、1.毎年の情報交換、作業進捗状況報告を踏まえ、研究成果報告会を行う。2.研究成果を逐次、口頭及び論文の形式で日本ロシア文学会、日本18世紀ロシア研究会、日本18世紀学会等で発表する。3.成果の一部を『ロシア18世紀論集』に発表する。4.成果全体をまとめる形で「研究成果報告書」を提出する。

次年度の研究費の使用計画

上記、平成24年度研究計画に即して、次のような作業に研究費を使用したい。
1.18世紀末から19世紀初頭ロシアにおける西欧の文学作品の翻訳を調査し、購入その他の方法で収集する。これは昨年度の作業の継続である。18世紀の文献に関しては、現在出版されているものはきわめて少ないので、国内外の研究機関からコピーを取り寄せることも必要であろう。
2.パソコンおよびその周辺機器等を整備し、関連分野の専門家との情報交換や研究上の意見交換に利用する。
3.海外で資料を調査し、必要なものを収集する。
4.経過報告も含め、成果を纏めて論文集として発行する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Russian sentimentalism and 'the prodigal daughter'2013

    • 著者名/発表者名
      M. Kanazawa
    • 雑誌名

      International conference 'Russian language and literature', Tamkang University

      巻: special issue ページ: pp.5-12.

  • [雑誌論文] 庭を侵す病――『infection』の映像世界2013

    • 著者名/発表者名
      安西信一
    • 雑誌名

      ユリイカ

      巻: 第45巻第6号 ページ: pp.155-166.

  • [雑誌論文] リチャード・ペイン・ナイト『風景』――解説と翻訳(1)2012

    • 著者名/発表者名
      安西信一
    • 雑誌名

      美学芸術学研究

      巻: 30号 ページ: pp.185-294.

  • [雑誌論文] イエナ・ロマン主義における<能動・受動>モデルの問題2012

    • 著者名/発表者名
      宮田眞治
    • 雑誌名

      ヘーゲル哲学研究

      巻: 18号 ページ: pp.19-32.

  • [学会発表] 18世紀ロシアにおける「公」と「私」を論じる―恋愛小説における「社会」の役割

    • 著者名/発表者名
      金沢美知子
    • 学会等名
      日本18世紀ロシア研究会
    • 発表場所
      東京大学
  • [図書] 「庭園の中の道具―桂離宮外腰掛をめぐって」、西村清和編『生活環境の美学』2012

    • 著者名/発表者名
      安西信一
    • 総ページ数
      pp.99-124
    • 出版者
      勁草書房

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公開日: 2014-07-24  

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