研究課題/領域番号 |
23520370
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金澤 美知子 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60143343)
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研究分担者 |
安西 信一 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (50232088)
宮田 眞治 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (70229863)
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キーワード | ロシア文学 / 18世紀 / 自然風景 / ヨーロッパ / カラムジン / 翻訳 / センチメンタリズム / ロマン主義 |
研究概要 |
本年度は昨年度までの研究実施状況と成果を踏まえ、研究作業の分担を確認し、今後の作業に必要な文献を調査した。文献は書籍の他、昨年同様必要に応じて複写、デジタル版等で入手した。なお研究年度全体を通じ、大まかに次のような分担が設定されており、今年度も概ねこれに基づいて作業を進めた。 イギリス文学、文化、風景及び視覚表象関連:安西信一が担当 / ドイツ文学、文化関連:宮田眞治が担当 / フランス文学、文化:金沢美知子と安西信一が担当 /ロシア文学、文化、ロシア文学関連及び作業全体の構成とまとめ:金沢美知子が担当。 金沢は、昨年度に続き、18世紀後半ロシアの文学テクストにおいてヨーロッパの「風景」が果たしている役割、及び「風景」が絵(картина)、場面(сцена)としてテクストに取り込まれる仕組みの基本的傾向を考察した。今年度は特にイギリスの詩人、ジェイムズ・トムソンの『四季』がロシア作家に与えた影響、ロシア文学にもたらした「自然」のイメージに注目し、ジュコフスキーの翻訳とカラムジンの翻訳の比較考察を通して、この点を明らかにすることを試みた。その結果、ジュコフスキーの詩的翻案的翻訳とカラムジンの説明的啓蒙的翻訳の対比が明らかになった。また、カラムジンの自然理解と自然描写が『四季』の影響のもと、自然を享受するというよりはむしろ、自然のシステムを理解しようとする啓蒙家の世界観を色濃く反映していることを解明した。 なお、成果の一部は2013年発行の日本18世紀ロシア研究会年報に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はカラムジンとジュコフスキーの作品を中心に、18世紀末から19世紀初頭のロシア・センチメンタリズムにおいて西欧の風景が果たした役割を考察し、一定の成果を上げることができた。 しかし、この2人の作家の文学活動、特に翻訳と創作の関係を分析するために必要な文献の入手が遅れ、分析そのものにも遅延が生じた。本年度の後半で研究計画を変更し、残りの作業は来年度に繰り越さざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は前年度の作業を受け、研究成果をまとめる。 1.ルソーの作品における自然描写、および自然観賞の行為の描写がロシア文学に与えた影響について、これまでの調査をまとめる。 2.ロシア・センチメンタリズムの代表的作家、カラムジンの「風景」観、および彼の作品に見る「自然」の表象を明らかにする。 3.ロシア前期ロマン派で翻訳者としても大きな役割を果たしたジュコフスキーの作品におけるイギリスロマン主義の「自然風景」の影響を調査する。カラムジンの「自然」」との比較考察も行う。 4.ゲーテの作品の「自然風景」がロシア文学に与えた影響についての考察をまとめる。。 平成26年度は本研究の最終年度として研究成果をまとめることに専念したい。具体的には、1.成果を学会、研究会等で発表し、2.『ロシア18世紀論集』に成果の一部を論文、翻訳等の形で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入文献の入手が次年度になった。 必要文献を入手し、研究報告書を発行する。
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