研究課題/領域番号 |
23520415
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂巻 康司 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (70534436)
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研究分担者 |
寺本 成彦 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (30252555)
森本 淳生 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 准教授 (90283671)
大出 敦 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (90365461)
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キーワード | 比較文化 / 日仏文化交流 / 近代日本文学 / フランス象徴主義 / 戦争 |
研究概要 |
今年度も昨年度に引き続き、フランス象徴主義受容に関する研究会を開催した。平成24年11月17日、学習院大学において開かれた研究会では、外部からお招きした信州大学准教授の渋谷豊氏が「野性児と海-日本におけるランボー受容」と題する報告をされ、金子光晴や富永太郎などにおけるランボー受容のあり方について多種多様な観点から分析をされた。主にフランス文学を専攻する研究者からなる出席者からは実に様々な意見や反論が出され、活発な議論が展開された。日本におけるランボーの受容形態が極めて複雑な様相を呈しているということが改めて印象付けられた。 また、平成24年12月15日には金沢大学人文学類の主催で「「古典」は誰のものか-比較文学の視点から」と題するシンポジウムが金沢大学サテライトプラザにおいて開かれ、そこでは坂巻が「詩人が「古典」になるとき-マラルメの場合」と題する基調講演を行った。これは明治・大正期日本におけるマラルメの受容に関する講演であり、本共同研究と密接に関わるものである。講演では上田敏や岩野泡鳴などの言説を通してマラルメがいかに日本文壇に受け入れられ、「古典」としての地位を獲得していったのかを考察したが、参加者からも興味深い意見が寄せられた。 また、平成25年3月には共同研究中間報告書第1号の編集作業を行った。これは昨年度の研究会報告(講演)に関わる二つの論考に一つの論考を加えた計三つの論考を掲載したものである。作業は順調に進み、年度末には刊行に漕ぎ付けることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、明治・大正期の日本文壇において、フランス象徴主義文学の影響下に誕生した幾つかの文学作品が、近代日本文学が形成されて行く過程で、いかなる意味を持ったのかという問題を分析する研究であった。そのような観点からすれば、フランス象徴主義の源流にいる詩人アルチュール・ランボーが、富永太郎や金子光晴のような近代日本文学史において重要な役割を果たした文学者たちに及ぼした影響について、研究会において検討する作業をしたことには大きな意味があった。これまでランボーといえば中原中也への影響ばかりが喧伝されることが多かったが、より広範囲な影響があるということを考えなければならないということが、今回の研究会において、改めて浮き彫りにされたように思われる。 また、今回は共同研究の中間報告書を編集・刊行することが出来たという点でも大きな意義があったと考えられる。これまでの研究成果をまとめ、それをもとに次の研究に向けてのステップアップを図るということも重要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、昨年度末に刊行した中間報告書を関係する研究者に向けて発送をするのが最初の作業となる。 また、平成25年度も昨年度までと同様に研究会を続けていく予定である。今年度は春と冬に二回の研究会を開催し、その中で、近代日本におけるフランス象徴主義受容に関する問題の所在を明らかにしていく予定である。 また、研究代表者は夏にパリ第4大学で開催される国際比較文学会において、この問題に関するテーマで研究発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度以降も、研究会や学会において研究発表をする研究者の交通費と謝金に研究費は主に充てられることになるだろう。それ以外は関係する資料収集のための物品費に充てられることになるだろう。
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