研究課題/領域番号 |
23520428
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 健二 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00283838)
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キーワード | ラテンアメリカ文学 / ペルー / アヴァンギャルド |
研究概要 |
4月に前年23年度に行なった研究の成果公表として、メキシコ・トラスカラ大学での公開シンポ『セサル・バジェホ』で研究発表"Trilce como paradigma mestizo"(メスティソ的規範としての『トリルセ』)を行い、研究計画にあった1910年代のペルー・メスティソ言説とバジェホの中期を代表する詩集との関係の総括を行い、各国研究者との情報交換を行なった。なお、このシンポの発表内容に、このときの質疑応答やその後の意見交換で得た情報を加味した論文"Hacia el entendimiento cabal del sentido "mestizo" en Trilce de Cesar Vallejo"(Estudios Hispanicos,37, pp.61-68, 平成25年3月30日)を刊行した。 24年度の研究計画は主として渡欧後のバジェホに関する言説を収集し整理することである。これに伴い、まずスペイン内戦期の詩的言説にかかわる研究論文集を入手し、この時期の文学言説をめぐる全体的な研究史の把握に努めるとともに、バジェホの専門研究史との関連性を整理することができた。 そのうえで25年3月18日から28日までペルー・リマ市に渡航、ペルー・カトリック大学を拠点に1924年から38年までのバジェホの後期言説をめぐる資料の整理収集に努めた。この際、ペルー国内においてバジェホの文献学的調査の中心的役割を担ってきたホルヘ・キシモト氏と接触し、同氏が個人的に収集している資料を閲覧することができた。バジェホはスペインやフランスからペルー国内の新聞雑誌のために膨大な記事を送っているが、従来、それらの資料を1920~30年代の雑誌本体も含めて見ることは困難であったため、この資料へのアクセスを果たせた意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度研究計画について ④渡欧後のバジェホの言説に関する資料(特に新聞雑誌の原典情報)確保は達成できた。 ⑤雑誌論文の先行研究確保は23年度に達成できている。 ⑥シュルレアリズムと国際義勇軍関係の諸言説に関する資料確保は「スペイン内戦期文学資料」(CD=ROM)によってある程度達成できた(シュルレアリズム関係はやや不十分)。 ⑦研究成果の公表はメキシコのシンポでの発表、紀要での論文刊行と、ある程度達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に行なったバジェホの中期言説に関する調査、また24年度に確保した後期言説に関する資料等に基づいて、本研究の目指す「バジェホの中後期言説の総合的研究」を完成させるため、必要な作業を行なう。 具体的には、まず、従来 Poemas humanos.の題で知られてきたバジェホ没後刊行の詩集について、その成立過程を検証する作業を行い、それを学会発表か論文という形で公表することを目指す。バジェホ後期の詩についてはそのほぼすべてが没後に第三者の手で編纂されたこともあり、その後の評価言説の蓄積とともに、受容に一定のバイアスがかかってしまっている。無題の詩が詩集選者によって恣意的に題がつけられたり、バジェホの残した手稿の修正箇所が活かされていなかったり、非常に問題点が多い詩集が今なお流通している。これらの問題点はバジェホ研究のコミュニティにおいてはあらかた整理しつくされているが、それをどう研究に活かすかについてはまだ道筋がついていない。 これらのことから、まず上記の作業を完了させた後、その成果をスペイン語で海外に発信していく作業が求められることは言うまでもない。26年以降、リマでバジェホに関する国際シンポも予定されており、そこへ参加する道を最終的に探ることにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度予算額のうち25年度に繰越しとなった179700円については、25年3月の出張時に購入した資料費(約15万円)にあてることとする。残る予算については学会などでの成果公表のための旅費、論文執筆にあたって必要な資料に洩れのあった場合の費用等にあてる。
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