ペルーを代表するスペイン語詩人セサル・バジェホ(César Vallejo, 1892-1938)の代表的詩集『トリルセ』(Trilce. 1922)をはじめとする中後期の前衛的な韻文作品を、メスティソ(mestizo)という語に象徴されるペルー文化特有の文化的混交という概念を手がかりに、また詩人が体験した1920年代の戦間期ヨーロッパ文化やスペイン内戦との接触過程をも視野に入れつつ検証し、その結果、それらの作品が、多様な矛盾する解釈が記号作用的に出会う場としてデザインされた重層的かつ創造的な詩的想像空間であるという結論を導き出した。
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