研究課題/領域番号 |
23520648
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
池上 摩希子 早稲田大学, 日本語教育研究科, 教授 (80409721)
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研究分担者 |
川上 郁雄 早稲田大学, 日本語教育研究科, 教授 (30250864)
齋藤 ひろみ 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50334462)
石井 恵理子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90212810)
野山 広 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究・情報センター, 准教授 (40392542)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度は研究年度の2年目にあたり、初年度に引き続き調査と実践を継続して行った。平成23年度は、浜松市における調査と浜松市立A小学校における実践を中心とし、多様な背景を持つ支援者グループの有機的な連携構築を目指して働きかけを行っていた。当該年度である24年度前期は、23年度に引き続き、浜松市と鈴鹿市への継続的な働きかけが中心となった。一方で、後期には代表者が所属校の特別研究期間を適用し、バンコクに滞在している。そこで、研究課題であるJSLカリキュラムの考え方をベースにした、「体験型」「関係性重視」の日本語教育に関する調査研究を進めている。現在、バンコクには約4万人の邦人と家族が在住し、児童生徒に対する日本語教育も展開されている。そこに現れてくる課題を把握し考察することにより、本研究課題にも有効な効果が期待できる。前期と後期の実績を以下に述べる。 【前期】すべて継続中。 浜松市の日本語担当教員、管理職、ボランティア、教育行政担当者などへインタビューを行い、A小学校で「算数科の学習を通して育成できることばの力」を重視して実践を行うNPOグループの活動への関与と協力を行った。また、鈴鹿市内の中学校でのJSLカリキュラムの実践への協力を行った。 【後期】実施済みのものをあげたが、特別研究間中は継続して進める予定。 「親と子の継承語教室」の参与観察、バンコク市内の児童生徒に対する日本語教育機関の見学を行った。また、バンコク市内の児童生徒に対する日本語支援者の勉強会、研修会へ参加した。 バンコクでの児童生徒に対する日本語教育は、日本帰国が前提になっていない子どもたちの場合は特に、日本語が第二言語なのか継承語なのかといった問題を越えて、思考と自己表現を支えることばの力が求められている。この点において、JSLカリキュラムの考え方をベースにしたことばの力と重ねての課題探求ができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の達成度を上げた理由としては、まず、浜松市での調査が予定通り進められたものの、平成23年秋に刊行予定であった書籍の出版が遅れていることがあげられる。指導実践の記録の収集と蓄積、関係者へのインタビューは終わっており、データはそろっているが、市の教育施策の中で日本語教育の進め方に変化がみられることや担当者の交代などがあり、内容構成や記載の仕方を見直す必要が出ている。この点は引き続き交渉を続け、出版につなげていく予定である。次に、「算数科」のNPOグループの教室において、実践記録をまとめる計画に関しては、目覚ましい前進はないが、研究代表者はNPOグループの活動へ関与を続けている(この点は後期も同様である)。それによって、支援活動全体とのつながりはつけられているものの、達成度を十分なものと評価することは難しいと判断した。 後期の活動の中心であるバンコクでの調査研究に関しては、そこでの知見が日本での研究活動に活かせること、しかしながら、平成24年度の後期が特別研究機関の半期分にあたり、継続しての実施と検証が必要なことから、同様の達成度で示すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を遂行するには、多様な立場の教育実践者や支援者との協働、各関係方面との良好な関係性の構築が基本となる。そして、浜松市、鈴鹿市の教育委員会や学校現場との良好な関係をベースに研究を進めることができている。初年度の終わりには、今後の推進方策として、この関係を保ちつつ、対象とする校種を高校に広げていく必要があることを述べた。小中学校との連続性を見るためには、中学校を研究対象としている鈴鹿市がある三重県と、研究代表者がこれまで調査活動を行ってきた実績がある神奈川県を候補にあげた。実際に対象を高校へ広げるにはまだ時間が必要な状況ではあるが、これまで継続して積み上げてきた関係を基盤にして、調査と実践を進めていけると考えている。 浜松市における調査と実践は「達成度と理由」でも述べたように、「算数科」のNPOグループの教室において実践記録をまとめる計画をより具体的に進めていく。そのための話し合いは24年度中に複数回実施できており、算数支援対象校の拡大に伴う研修会が直近の課題となっていると理解できた。この研修会に実践記録のまとめ方を取り入れることで、計画が具体化できると考えている。 バンコクにおける調査は25年度前半は継続して実施し、バンコクという文脈でのまとめとJSLカリキュラムの考え方という文脈でのまとめを行う。後者については、成果をこれまでの国内での調査と実践に重ね合わせることができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、国内の教育実践現場を訪問し、調査と実践を進めていく活動が主軸であるので、計上している研究費は旅費が主となっている。この点は次年度も大きな変化はない。国内の訪問先は静岡県浜松市、三重県鈴鹿市が中心である。浜松市における調査はある程度の回数が必要と考えているので、浜松市訪問の回数を若干増やすことを考えている。鈴鹿市に関しては、これまでと同様、教育委員会からの招聘を受けるケースもあるため、研究費の使用回数を減らしても実施計画に支障はない。また、調整の後、主にバンコクでの調査を継続できるようにするが、特別研究期間中であるので、この研究費からはそれほど大きな支出は見込まなくても動けるのではないかと計画している。 研究補助として計上している費用は、インタビューの文字起こしなど調査結果の処理に使用する人件費が主なものとなる。大規模な研究集会は調査が進んでから実施する予定であるので、こうしたことへの利用は計画していない。その他、資料としての書籍や若干の備品を購入する必要が出た場合のために経費を積算してあるので、適宜、使用する予定であり、この点は大きな変化はない。
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