研究課題/領域番号 |
23520862
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江村 治樹 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (80093201)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 古代都市 / 殷周時代 / 竜山文化 |
研究概要 |
考古学の報告書、考古学関係雑誌、『中国文物地図集 河南分冊』などから、河南省を中心とした新石器時代から殷周時代の都市遺跡ならびにその周辺の遺跡の資料を収集し、データベースソフトの「ファイルメーカー」によってデータベース化した。ついでこのデータベースにもとづき河南省内の当該時代の都市遺跡の資料を整理し現地調査に備えた。 現地調査では、中国社会科学院歴史研究所副所長の王震中教授と山東省歴史文化学院の張昀講師に協力を仰ぎ、安陽のエン(サンズイに亘)北商城、殷墟、偃師の二里頭遺跡、偃師商城、鄭州の商城、新密の古城寨、新鄭の望京楼城址、鄭韓故城などを調査し多くの新知見を得た。 この成果は他の都市遺跡資料とあわせて整理、分析し、「河南竜山・二里頭・殷周都市の特質-2011年、中国古代都市遺跡調査報告」(名古屋大学文学部研究論集・史学58、2012年3月)として公刊した。これによって、竜山期には小模な城塞都市が多数存在したが、二里頭期になると中核都市と中小都市に分化して権力の発生が確認できること、殷代では中核都市がさらに発展、巨大化し都市内部の状況も複雑化することが明らかになった。 河南省は中国古代文明発生の中心地域であり、戦国秦漢時代には都市発展が顕著な地域である。この中心地域における都市の初期の状況を解明できたことは、中国古代都市社会の形成過程を総体的に考えるうえで極めて重要である。また、殷代都市の特質を明らかにしえたことは、戦国都市社会との比較の上で意義あることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、新石器時代から戦国秦漢時代までの都市社会の成立過程を総合的に明らかにすることである。初年度は、都市社会成立の第一段階である竜山期から殷周時代にかけての都市について、とくに河南省の都市の実態を解明すること目指した。都市遺跡のデータベース化は河南省部分では完成し、山東省部分も大半は完成した。先秦文献史料は伝説以外期待できないがカード化はあまり進展していない。現地調査に関しては河南省を予定していたが、重要な都市遺跡はほぼ調査でき、予想を越える新知見をえることができた。とくに、まだ報告書で発表されていない、発掘中の遺跡を何か所か見学でき、発掘責任者から直接情報を得ることができた。以上のデータベース資料と現地調査により、第一段階における都市社会の具体的形成過程について、おおよその見通しを立てることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は竜山から殷周期までの第一段階都市遺跡のデータベースを完成させる。先秦文献史料に見える古代都市のカード整理も推進する。また、現地調査は山東省内の竜山期、西周時代の都市遺跡について行う予定であり、河南省の都市との比較検討を進める。 次々年度は、時間と予算があれば陝西省の西周都市遺跡あるいは湖北省の竜山都市遺跡の現地調査を考えている。しかし、現地調査には限度があるから、基本的には実現できた現地調査と、データベース資料にもとづいて第一段階の都市社会の実態を明らかにする。そして最後に第二段階の春秋戦国都市社会との接続をはかり、総合的に中国古代都市社会の成立過程とその特質を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
定年退職により勤務する大学がかわったことにより、関係する考古学の報告書等が不十分であるため、予算の相当部分を図書購入に充てることになる。 現地調査用のデータベースや資料の格納や現地での資料収集と整理のため、最新のノートパソコンを購入する。また、都市遺跡資料のデータベースを完成させるため、データの入力に研究補助者の協力も仰ぐ。 山東省内における都市遺跡調査のための旅費のほか、現地協力者への協力費の使用を計画している。
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