前々年、前年度に引き続き、考古学の報告書、考古学関係雑誌、『中国文物地図集』などから新石器時代から殷周時代の都市遺跡ならびにその周辺遺跡の資料を検索、収集し、データベースソフト「ファイルメーカー」によってデータベース化した。そして、このデータベースを整理して「二里頭・殷周都市遺跡表」を作成した。 前々年度は河南省内の都市遺跡の現地調査を行い、前年度には山東省の高青県で開催された中国殷商文化学会主催の中国古代都市に関わる国際学術会議に出席するとともに、山東省内の都市遺跡を調査し、古代都市に関する多くの新知見を得た。本年度は、北京の社会科学院歴史研究所と考古研究所の図書室で都市遺跡関係資料を調査し収集するとともに、王震中、許宏、杜金鵬氏などの研究員に古代都市の関するインタビューを行い最新の情報を入手した。 以上の「二里頭・殷周都市遺跡表」と都市遺跡の現地調査、中国の研究者へのインタビューなどに基づき、二里頭文化期から殷周時期の都市社会を分析し、その形成過程を考察した。その結果、この時期の都市は基本的に城郭都市であり、無城郭の王都はむしろ特殊な都市形態であることが判明した。そして、二里頭文化期以来、都市社会は複合的な族的、文化的な様相を有しており、殷周時期の都市社会も外部からの少数の支配層が、多数の「夏遺民」や殷遺民、土着民を支配する複合社会であるが、西周期に入るとしだいに同化が進行し、春秋、戦国期の都市住民の共同性が成立してくることが予測された。この研究成果は、「先秦都市社会の形成-二里頭・殷周から戦国へ」(東洋史苑81号、2013年12月)として公表し、この論文と現地調査の成果をまとめて研究成果報告書『中国古代都市社会形成論』(2014年3月)を公刊した。
|