研究課題/領域番号 |
23520985
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高谷 紀夫 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70154789)
|
キーワード | ミャンマー / 人類学 / 民族 / 宗教 / 境界 |
研究概要 |
本研究は、代表者が1980年代より継続している多民族国家ミャンマー(旧ビルマ)とその周辺における文化と社会に関する人類学的研究の一部を成すものであり、その主目的は、既存の民族論に対する批判的評価を基盤に、ミャンマーの政治的脈絡において、「民族」の境界と「宗教」の境界との関係性について、現地資料を活用して考察を加えることである。 平成24年度は、国内外において、研究課題に関する資料蒐集、及び情報交換を実施した。現地ミャンマーでは、マイノリティであるシャン族キリスト教徒(特にバプティスト)に対するインタビュー、及び文献資料の蒐集を前年度に引き続き行った。その際、複数のクリスマス行事を参与観察し、ビルマ族仏教徒が大半である地域社会において、シャン族キリスト教徒が、その「民族」の境界と「宗教」の境界の存在を意識しながら、巧みに操作する実像が明らかになった。 またミャンマーで独立後初めて開催された全シャン(タイ)民族シャン正月祝賀会(東部シャン州、ケントゥンにて)に招待され、シャンの民族知識に関する講演を行い、人脈の開拓に努力したことも特筆すべき実績である。併せて、過去の研究成果を、日本人研究者として最初になる、正式なヤンゴン大学客員教授として、同人類学科スタッフ、及び大学院学生に還元する啓蒙活動にも従事した。さらにアジア世界を俯瞰した比較研究を進めるために、多民族国家中国内モンゴル自治区における多民族共生状況の参与観察にも取り組んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外での資料蒐集、及び情報交換を、おおむね順調に実施することができた。また現地研究協力者の支援による研究成果の一部還元、さらに将来につながる人脈を開拓できたことも、研究目的の達成に貢献している。 以上の理由から、研究活動はおおむね順調に進展していると自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度から継続して、国内外での資料蒐集、及び情報交換を実施する。併せてアジア世界における他の多民族国家との比較研究を進めるために、ミャンマーだけではなく、他地域でのフィールドワークを実施する計画である。その中に、平成23年度に続き、国立民族学博物館外来研究員、松井生子氏のカンボジア派遣も含まれる予定である。 なお平成25年度は最終年度にあたる。蒐集資料の分析をより深化させて、研究活動を推進するとともに、論文集の発刊を予定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費により、研究課題に関する文献購入、及び研究活動を支援する機器購入を行う。 旅費により、国内研究機関への出張、及び海外出張を行う。 人件費・謝金により、研究活動の進展を図る。 その他により、資料複写、文具類の購入、論文集の編集などを行う。
|