フランスの立法過程・政策決定過程における各権力、各機関の相互関係、連携、協力について各種文献を通じて、また関連する研究会、学会にも出席し、ときには発表も担当して、知識を深め、精査した。特にフランスのエクサン・プロヴァンスで開催された第30回国際憲法裁判学会円卓会議に出席し、研究成果の一端を発表するとともに、さまざまな情報もえた。中央大学日本比較法研究所の自らが主宰する二つの研究グループにおいても発表を担当したり、海外から研究者を招いて講演会を開催したりした。研究成果を含む単著も出版した。また2014年度は、中央大学から特別研究期間を得ることができ(研究テーマは「憲法院とコンセイユ・デタ」)、憲法裁判研究の第一人者であるパリ第一大学のベルトラン・マチュー教授の著作『合憲性の優先問題―判例』の翻訳に取り組み、出版することができた。この翻訳を通じてえた成果も、本研究に反映している。 フランスでは2008年7月の憲法改正によって、これまでの立法過程における事前審査に加えて市民の抗弁による事後的違憲審査制が導入された。これまでの事前審査と事後審査との整合性も問われているが、憲法院は注意深く、一貫性のある判決を下している。また事後審査が導入されたことで、司法及び行政のそれぞれの系列の裁判所も憲法問題に深く関心をよせるようになった。さらに事後審査は、これまで適用されていた法律を違憲と判断することで無効とすることをもたらす。この無効とする時期を憲法院が自ら決定することで、議会に対してもより大きな権限を行使することとなった。真の法治国家としての発展が、各権力の連携、協力を通じて行われていることを理解した。
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