研究課題/領域番号 |
23530238
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鍋島 直樹 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (70251733)
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キーワード | 経済思想 |
研究概要 |
24年度には、ポスト・ケインズ派経済学と密接に提携しながら展開されているアメリカ・ラディカル派経済学の研究動向の把握に努めた。とくに「社会的蓄積構造理論」(SSA理論)に焦点を合わせて、その特質と意義について考察した。 欧米マルクス・ルネッサンスのうねりの中から1970年代末に登場し、それ以来、今日に至るまで分析枠組みの拡張が連綿と進められてきたアメリカ出自の「社会的蓄積構造理論」の視角にもとづき、資本主義がこれまでどのように構造変化を遂げてきたのか、新自由主義とその危機をどう理解するのか、そしてこれからの資本主義がどこへ向かうのかについて、大まかな展望を試みた。 第二次世界大戦後のアメリカは、「戦後コーポレート・システム」と呼ばれるSSAのもとで長期にわたる成長と繁栄を謳歌した。しかしながら、アメリカ企業の支配力に対する国内外からの異議申し立てに直面して、1960年代末にそのシステムの内部分解が始まった。これによって戦後アメリカの高度経済成長は終焉を迎え、1970年代以降の長期停滞が始まった。その後、十年に及ぶ社会的闘争を経たのち、1980年代初めに「新自由主義SSA」が確立した。そのSSAは、労働側に対する資本側の優位を大きな特徴としている。新自由主義SSAのもとでの経済成長は緩慢なものであり、またそのもとで所得格差の拡大も進んだ。そして2007~8年の金融危機を転機として、新自由主義SSAは衰退の局面に入ったように思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つは、異端派経済学の諸潮流とポスト・ケインズ派経済学との異同について検討し、異端の諸学派の学問的提携の可能性を探っていくことにある。この目的を果たすべく、24年度には、アメリカ・ラディカル経済学の展開についての考察を進めた。その成果については、すでに論文の形ににまとめており、近く公表する予定となっている。これまでの成果にもとづき、今後は、ポスト・ケインズ派経済学の形成・発展過程についての研究を、さらに深く進めていくことができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえて、ポスト・ケインズ派経済学の形成と展開についての考察を進めていく。それと併せて、ケインズとカレツキの学史的検討、ラディカル政治経済学の新動向の把握などの作業も並行して進めていく。研究期間全体を通じて、経済学における過去と現在のあいだの往復作業を続けいくことになるであろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度には、ほぼ計画通りに研究費を使用し、その結果、1198円を次年度に繰り越すこととなった。25年度についても、当初の申請からの大きな変更はない。研究費の大部分を経済理論・経済学史関係図書の購入に充てるとともに、必要に応じて、資料収集のための国内旅費、および謝金などの支出を行なう予定である。
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