研究課題/領域番号 |
23530687
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山田 昌弘 中央大学, 文学部, 教授 (90191337)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 国際結婚 / 恋愛 / 香港 / シンガポール / トルコ |
研究概要 |
研究協力者と分担しながら、アジア人と結婚した日本人女性25名へのインタビュー調査を行った。また、現地の事情に詳しい大学教授らと意見交換を行った。従来、国際結婚に関するインテンシブな社会学的調査は、日本における日本人男性と外国人女性という組み合わせが中心で、海外在住の日本人女性に関する調査はほとんどなかったので、貴重なデータである。 このタイプの国際結婚が増えている背景には、(1)日本における経済停滞、それにより、若者の経済力が低下して、日本人男性との結婚が経済的に難しくなっているということがまずあげられる。(2)そして、その結果でもあるが、日本人男性が恋愛に対してアクティブでなくなっているということがあげられる。そして、現在アジアは経済的に発展段階にあり、また、男性も極めて恋愛、結婚において積極的ということがある。 そして、最大の背景要因は、日本人の若い女性が日本において、いまだ、職業的に差別的環境にあることである。その結果、意欲や能力がある日本人未婚女性がグローバル化に活路を求め、海外留学や海外就職、語学を生かした就職をめざすという行動が取られやすいことを見出した。その結果、外国人男性と知り合い結婚に至るという回路が見いだされた。インタビューにおいて、彼女たちが「日本社会での女性であることによる生きにくさ」を語っていたのが印象的である。それに対して、アジア人男性の積極さと現地での女性の活躍可能性について言及していた。 日本人女性とアジア人男性の結婚は、まさに、日本の経済的停滞と女性差別的環境によって促進されているということが、現在までの暫定的結論である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者と分担して、アジア諸国を3カ所(シンガポール、トルコ、香港)、30人もの対象者(アジア人男性と結婚して現地に住む日本人女性)にインタビュー調査を行うことができた。現在、インタビュー記録をもとに、日本人女性が、なぜ海外に興味をもったのか、どのような経路で結婚に至ったのか、どのような家族を形成しているのかという点について、分析を行っている。 ただ、記録を分析する過程で、もう少しつっこんで聞いた方がよい点が見えてきたことである。それは、事前に調査項目を知らせているので、回答者が用意してきたものを読むだけということがあり、調査項目以外の点、特に、恋愛に関する考え方や、日本との働き方の違いなどについて、聞いた方がよいという事が分かった。 また、研究協力者との分担調査を行ったことから、一部、調査項目の相違があったことは残念である。 データが3国に限られたこと、特に、シンガポールと香港という経済発展の著しい国でのケースが多いことは、メリットとデメリットが見えてきた。外国人を受け入れ、英語が基本的に公用語になっている国は、グローバル化という点でわかりやすいが、未だ、グローバル化が進まないアジア諸国での国際結婚と比較するとその特徴がもう少し見えてくると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、香港、シンガポールというグローバル化が進展しているアジア国家での日本人女性の国際結婚についてインタビュー調査を継続する。その際、反省点をふまえ、ワークライフバランスなど、現地での仕事と日本での仕事の相違点などについても聞くようにする。また、この両国に対しては、サンプリングが難しい所ではあるが、現地の協力者を得て、アンケート調査を行う予定である。調査地点を拡大し、香港、シンガポールとは異なった国の国際結婚についてインタビュー調査を行い、国による国際結婚のパターンの違いについて考察を深める予定である。インドネシアかベトナムを予定している。現地の協力者の手配が得られ次第、決定する。インタビュー人数に関しては、次年度も30人を目標にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定通り、海外でのインタビュー調査のため、海外旅費に使用する(香港、シンガポール、トルコ、インドネシアかベトナム)。香港大学の研究協力者との打ち合わせに使用する。また、現地調査のコーディネーター、現地での調査協力者への謝金、および、調査資料を整理するための謝金にも使用する。調査を行うための事務用品に使用する。予定 7月 シンガポール調査、9月トルコ調査、インドネシアかベトナム調査、2月香港調査を行う予定である。
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