研究課題/領域番号 |
23530725
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
衣笠 一茂 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (50321279)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | コミュニティ・エンパワメント / コミュニティ・ソーシャルワーク / 周辺地域 / 限界集落 / 地域の主体性 / ネットワーク協議会 / 生活課題実態調査 / 実践モデルの構築 |
研究概要 |
平成23年度においては、本研究のフィールドサイトとなった大分県中津市山国町において、コミュニティ・エンパワメントを推進する中核機能を担うネットワーク協議会の設立(源流の里やまくに福祉の会)、ネットワーク協議会が中心となった山国地区に住む全世帯を対象とした「生活課題実態調査」の実施とその分析、そこから析出された住民相互の連帯感情にもとづいたサロン活動「たいしょう陣」の開催、までに至る、山国町におけるコミュニティ・エンパワメントの基礎となる活動のフィールドワークを行い、周辺地域・限界集落における地域住民の主体性の形成過程についてのデータの収集を行った。 また、設定されたコミュニティ・エンパワメント・モデルとの整合性を確認しながら、地域住民の主体性と可能性が引き出されてゆくプロセスを科学的に分析し、仮説的に構築されたコミュニティ・エンパワメント・モデルの実証的な検討を行った。その結果、住民の主体性に基づいた地域活動を展開してゆくことによって、周辺地域・限界集落であっても、住民自身の生活ニーズを相互に充足してゆくことが可能であることを実証した。また、とくに住民の相互関係・相互作用の活性化によって、住民自体の主体や自主性を引き出してゆくことが可能になるような、コミュニティ・ソーシャルワークの活動の必要性についても一定の実践的蓄積を得ることができた。 このような結果を基にして、次年度はコミュニティ・エンパワメントの具象化に向けた、コミュニティ・ソーシャルワーク実践の実際的な在り方を、中津市社会福祉協議会との協働において展開してゆく予定である。このことを持って、都市部とは異なった生活背景を持つ周辺部・限界集落における、住民の生活ニーズを充足しうるような地域福祉システムの構築を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は仮説的に構築したモデルに従い、コミュニティ・エンパワメントの理論枠組みとその具象化の方法としてのコミュニティ・ソーシャルワークの実践について実証的な検証を試みることを目的としており、とくに山国町におけるネットワーク協議会(源流の里やまくに福祉の会)との協働によって「たいしょう陣」と呼ばれるサロン活動の開催過程までを実証的に把握することができたが、地域のキーパーソンである民生委員協議会長が体調不良により入院され、そのため一連のコミュニティ・エンパワメントの活動が一時期停止したことがあった。 これは予期せぬことであったが、そのために本来であればより詳細なデータ収集と分析、また実践の展開が可能であったものが、極めて限定された回数に制限されることとなった。この点は平成23年度の課題であるが、平成24年度は新しく民生委員協議会も改変され、活動の活性化が期待されるので、「周辺部・限界集落における住民の主体性に基づいたコミュニティ・エンパワメントの具体的な方法論の構築」という本研究の主題に基づいたフィールドワークを展開してゆきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、一定の活動の蓄積を経てきた山国町をフィールドサイトとして、中津市社会福祉協議会との協働において、コミュニティ・エンパワメントの概念を具象化するコミュニティ・ソーシャルワークの方法論を検討し、それを実践モデルとして構築したうえで、実践展開してゆくことを検討している。そのため、中津市社会福祉協議会山国支所に配属された社会福祉協議会専門員(コミュニティ・ソーシャルワーカー)と議論を重ね、現在実践モデルを構築中である。また、構築された実践モデルが他地域にも援用可能かどうか、を検証するために、大分県宇佐市、大分県日出町、大分県豊後高田市を新たにフィールドサイトとして設定し、院内地区地域包括支援センター、日出町社会福祉協議会、豊後高田市社会福祉部との協働において、山国町の経験に基づいたコミュニティ・エンパワメント・モデルを実施できるように準備している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に研究の推進に必要な物品はそろえることができたので、平成24年度はフィールドワークに赴くための現地までの旅費と、理論モデルを実施してもらうコミュニティ・ソーシャルワーカーへの謝金が中心になる。また、他の地域にも援用可能なコミュニティ・エンパワメントの理論モデルを整理しておくため、山国町における経験を中間報告書として発行する計画があり、その報告書の発行費用を「その他」として計上している。
|